寿司

皆さん、寿司を握ることはできますか?
握ったご飯の上に切った生魚が乗っているだけですが、「あの程度の物は誰でもできる」なんて誰も思っていないでしょう。
見た目は簡素ですが、実際に握って、提供して、顧客に喜んでいただくには、職人さんの技術、知識、経験、ノウハウ等が必要だと分かっているからです。
その上で、ご商売をされています。

寿司

これは何も寿司を握るというだけの話ではなく、どんな業種業態においても言えることでしょう。
料理を作れる人はたくさんいるでしょうが、そういった方が料理を提供する店を出したら皆お客様に喜んでいただける…なんて誰も思わないはずです。

しかし、Webやパンフレットや名刺などのページ数の少ない平面媒体は「作るだけ」なら誰でもできるので、事業として参入する企業は後を絶ちません。
私の経験から2つのケースをご紹介します。

[case:1] 業界の知識〇/制作の知識×

とある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社は、元々不動産業者向けのソフトウェアを販売していました。
Webサイトも作ってほしいという声があったので、デザイナーを雇用してWeb制作も請け負うようになったのですが、社長自体がWeb制作に関する知識がなく、相手が気に入る見た目のものを作ればそれでOKだと思っていました。

私が入社した時には、元々一人いた女の子のデザイナー(Kちゃん)が育児休暇中で、制作担当は私一人でした。
一番最初に携わった仕事でのことですが、デザインを作成して社長に見せたところ、(クライアントに確認しないで)コーディングをしろというのです。
同業者の方でないと分かりにくいと思いますので飲食店で例えると、お客様が入店したら、メニューを聞かずに勝手に料理を出せというのと同じ状態です。

これがこの会社のやり方なのかと思ったのですが、Kちゃんに仕事上のことで確認することがあった際についでに聞いてみました。
Kちゃん曰く、今までも取りあえずデザインして、コーディングして、相手に見せてフィードバックに対して修正して…というのを繰り替えしていたそうです。
例えるなら、メニューを聞かずに勝手に料理を出して、気に入らなかったら別のものを作り直して出すといった感じです。

Kちゃんはデザインの学校を卒業し、BtoCの通販事業を行っている会社で楽天のサイトの管理を行っていました。
デザインの知識もコーディングの技術もあるのですが、顧客から依頼を受けてのWebサイト制作をしたことがなかったので制作会社の制作フローは知らず、おかしいなとは思いつつも具体的に指摘ができなかったそうです。

そんな無茶苦茶なやり方をやっている会社があったのかと驚きましたが、このままではいけないと思い、社長に直談判して最終的には私がクライアントのところに行って折衝から全てを行う風に取り付けました。
社長はなぜだかピンと来ない顔をしていましたが。

[case:2] 業界の知識×/制作の知識×

同じくある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社で医療支援のシステムを制作、販売しようとしていました。
医療業界に関する定期的な情報収集もしておらず(業界紙や雑誌すらありませんでした)、医大の教授と共同で開発…などもやっている訳もなく、情報と言えば社長の奥さんがとある病院の現場で働いているというだけで、そのシステム自身、業界で一番有名なシステムより機能を増やして価格を下げたら売れるであろうという根拠のもとに作っていました。
システム自体の制作プロセスが滅茶苦茶なのですが、システムに関しては私は関わっておりませんでしたので、この記事では割愛します。
システムではなく、パンフレットを作る際のことです([case:1]とは異なり、サービスの提供ではなく、自社用の販促物の制作の話になります)。

ちなみにDTPの知識のあるデザイナーは会社にはいませんでしたし、最初にパンフレット作りで集まっていたグループの誰も、どうやって作ったら良いのかというフローに関する知識もろくにない状態です。
私はそれに途中から参加することになった訳ですが、結論から言うと作り方が滅茶苦茶でした。

実際に使用される方向けなのか、代金を払う経営者向けなのか、その辺りも明確ではない。
何となく考えて、それぞれがどういう基準で良し悪しを判断したのかは分かりませんが、多数決で決めたキャッチコピー。
それ以外の文言は確定していません。

それらを使って他のスタッフが良いと思う(=気に入る見た目)で作ってみて、といった感じでした。
Francfrancみたいな感じが好きやから、そんな感じで作ってみてほしい」…Francfrancと医療と関係あるんかいなって話です。
もちろん、そんな状態で作ったところで当を得たものを作れるわけもありません。
言葉を選びながらつっこんでみたところ、「みんなお客さんの気持ちになって考えています」と言われてしまいました。

作り方を知らなければ作れません

両者に共通して言えることは、自分達が業務を行うだけの知識すら備わっていない、無知だという意識がないということです。

[case:1]の場合は、社長は不動産業界出身なので、業界の知識はありましたが、Webサイト制作に関する知識はゼロでした。
[case:2]の場合は、医療業界の知識も情報もありませんでした。パンフレットを制作する手順も知りませんでした。

表にするなら以下の通りですね。

対象の業界に対する知識 制作に関する知識
case:1 ×
case:2 × ×

ノウハウというものは、業務を重ねながら徐々に得ていくものですので、最初はノウハウがないのは当然です。
同じように経験がないのもしょうがありません。誰だって最初は未経験です。
しかし、知識がないのに調べもしないし、人に聞きもしないどころか、自分達は間違っていない…これでは成功しませんね。

「自分達に不可能なことを業務として、ビジネスになりますか?利益が出ますか?」
こう聞くと「無理に決まっている」誰もが答えるでしょう。
しかし、ビジネスでは得てして握れないのに寿司屋を開業しよう、寿司を売って利益を上げようということが起こりえます。

これからやっていくにしても、スキルやノウハウが身につくまで長い目で見ることができるか、耐えられる企業体力があるか。
適切な人材がいるか、あるいは適切な人材を得られるのか。
他にちゃんと収益を上げる事業の柱があってのことか。
こういったことがクリアできないと、事業としてスタートラインに立つことも難しいでしょう。

私の在籍しているIT業界ではこういった企業をちょこちょこ見かけます。
そもそも顧客や自社のベネフィットを満たすものが作れないから、会社がもりもり潰れるのかもしれません。

ちなみに、私は寿司のネタならハマチとかヒラメなどの白身魚が好きです。

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