グランフロントのエレベーターの案内表記

デザインというものはまずロジックがあり、そのロジックに基づいて作成されます。
以前、デザインとは意匠という意味だけではないと書きましたが、「デザイン」という単語を「意匠」という意味として使用していても、「設計」という意味として使用していても同様です。

さて、行ったことのない方には申し訳ありませんが、以下はグランフロント大阪の北館のエレベーターの内側から見たドアの写真です。
グランフロント大阪の北館から南館を経由して大阪駅まで2階で繋がっているので、南館や大阪駅に行く人は2Fで降りるように扉に書いてくれています。

グランフロントの案内表記

黒い帯を右(階数のボタンがある方)にたどっていくと、以下のようになります。

非常ボタン

視線でたどった先が非常ボタンになっています。

横書きの文章は(アラビア語などの例外を除いて)、左から右に読みます。
そのさらに右側に階数のボタンがあって、そのボタンのあるところまで黒い帯を引いているのは、ボタンまで視線を誘導する意図だと思います。
だとすると、視線の先は2Fのボタンでないと、視線を誘導した意味がありません。
もし視線を誘導する気がないのであれば、帯を右まで引かず、帯とボタンとを完全に独立したものにする、あるいはそもそも帯を使わない方法でメッセージを目立たせるようにする必要があります。

帯を使用することを前提とした解決策としては、①帯の高さを2Fのボタンの高さにする、あるいは②帯を途中で切って他の方法で2Fであることが分かるようにする方法などが考えられます。

改善案

①の方法の方がスマートではありますが、表記が低い位置にあると、何人かの人がエレベーターに乗った場合に前の人で帯(2Fで降りるようにというメッセージ)が見えづらくなります。
②の方は帯とボタンの位置関係によっては、見た目が歪になる可能性があります(例の図がすでに、結構無理しています)。

他の方法としては、南館や大阪駅に行く人は2Fで降りることを伝えることができれば良いわけですから、扉側でなくボタンの側に注意書きとして書くということも考えられます。
エレベーターに乗った後の方がメッセージの伝達の確実性は高まりますが、エレベーターの中ではなく、外側の扉、あるいはその周辺に表示する方法もあります。

グランフロントができたときはこの表記はありませんでした。
おそらく利用者の利便性を考えて2Fで降りるように表記してくれているのでしょうから、悪い例として挙げるのは申し訳ないのですが、もうちょっと考えてくれていたらより利便性は高まったのではないかと思います。

こういった案内表記は、商業施設や駅などのいたるところにありますので、見かけたら、紛らわしくないか、もっと分かりやすくできないか、自分ならこうする、など考えてみてはいかがでしょうか。
よく考えられていることに感心したり、適当にやっていて逆に感心したりします。

扉に私の姿が写りこんでいますが、誰も乗ってくるな、誰も乗ってくるな、ドアが開いたら恥ずかしいと思いながら携帯で写真を撮っていたのはワールドワイドウェブだけの秘密です。

好みのデザイン

企業様や事業主様がWebサイトや名刺、パンフレットなどを外注されているケースがほとんどだと思います。
要件を伝えるにあたって、見た目の好みの話になっていませんか?好きな色の話になっていませんか?
制作会社がデザインのサンプルを提出をした際、見た目の好き嫌いで良し悪しの判断をつけていませんか?

デザインとは

「デザイン」という単語を聞いて、どのようなことを連想されるでしょうか?
おしゃれ、かっこいい、かわいい…といった、見た目を良くするというイメージをされるのが多いでしょうか。

デザインという単語を辞書で引いてみると

デザイン【design】
[名](スル)
1 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市を―する」「制服を―する」「インテリア―」
2 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具に―を施す」「商標を―する」
3 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活を―する」

デジタル大辞泉より引用

となっています。

このうちの3のみが目的をもってと明記していますが、1も何かしらの目的があるからその実用面が考慮され、意匠がなされるわけですし、2にしても図案や模様の対象となるものが何かしらの目的や意図をもって作られたものですので、それを無視した図案や模様は考えにくいと言えます。
つまり、広義な意味でデザインとは目的をもってなされているものであると言えます。

実際のところは?

Webサイトの例で、かつ少し古い記事ですが、以下引用です。

デザイン決定のポイントは、「発注側の経営者・上司・担当者の好み」が54%。「サイト制作のゴールを達成できそうだから」(20.7%)の倍以上の割合で「好み」を優先。

Web担当者Forumより引用

パンフレット、フライヤーなど、他の制作物のデザイン決定においても、単に好みで決めている割合はさほど変わらないと思いますし、またこの傾向は現在もさほど変わらないと思われます。

そもそも見るのは誰ですか?

Webサイトを実際に見るのは誰ですか?
「発注側の経営者・上司・担当者」ではなく「ターゲットとなるユーザー」ですね。

見込み客のターゲットユーザーがWebサイトを見て「経営者・担当者の好みを反映したデザインだから、ここに発注しよう」なんて考えないのは言わずもがなです。
「発注側の経営者・上司・担当者」の好みの反映がターゲットユーザーの意思決定にプラスの作用を及ぼすってことはありませんよね。
つまり、色・形が「発注側の経営者・上司・担当者」の好みか否かの時点でWebサイトの目的を見失っている言えます。

これに関しては発注側だけの問題ではなく、制作側も適切な判断ができるように促すことができていないというのも問題です。

最終的に判断するのは?

とはいえ、最終的な判断をするのは発注側ですから、発注側がゴールを達成できるかどうかの判断を行う必要があります。

「そんなことを言っても、デザインを見たってゴールを達成しそうかどうかなんて分からない」
そう思われるのはしごく当然な話です。
ですから、制作側にはデザインの意図をしっかりと説明させてください。
なぜ、各要素をそのように配置しているのか
なぜ、各要素がこの大きさなのか
なぜ、この色なのか
なぜ、このフォントなのか
なぜ、こういうサイト構成になっているのか
それらがどのようにサイト制作のゴール達成に結びつくのか

それらを説明できないのは、ただ形を作っただけで、目的を果たすための意匠ではないということです。

発注側が適切な意思決定ができると費用を無駄にしないだけでなく、制作側も仕事がやりやすくなりますし、場合によってはもっと良い提案をしてくれるかもしれません。
そのためにも、デザインをチェックする際はゴール達成に結びつくかという視点で見るようにお勧めします。

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