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中小企業の経営戦略

企業としての方向性を見誤ると、存続自体が危ういものになってしまいます。
そうならないために、戦略が必要になります。
しかし、規模の大きな企業と、小さな企業とでは条件の違いから選択肢が異なるはずです。
中小企業にとって必要な戦略とはどういったものであるかを検討したいと思います。

経営戦略とは何か

経営戦略とは何でしょうか?
コトバンクで検索してみた結果からいくつか抜粋してみました。

  1. 企業が競争的環境のなかで生抜いていくために立てる基本的な方針。
    (出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
  2. 事業体が経営目的を達成できるようにするための方策全般をさす。特に全体の活動の方向づけや、方向づけられた活動をできるようにするための体制づくりなどのレベルを経営戦略とよぶ。
    (出典:ナビゲート ビジネス基本用語集)
  3. 経営目標を達成するための手段選択の枠組み
    (出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))
コトバンク

これらを見ると、目的を達成するための方策や枠組みという点は共通しているようです。
人によって様々な表現の仕方はありますが、目標達成のために事業ドメインの設定と資源の再配分といった言い方をすることもあります。

では、もうちょっと具体的に考えてみましょう。
企業は存続しなくてはいけませんが、そのためには利益を出す必要があります。
利益は売上から費用を引いたものですから、どうやって売上を上げるか、そのために何にどれだけ費用を使うか(資源の再配分)ということを検討しなくてはいけないでしょう。
売上は、誰に、何を、どれだけ売ったかで決まります。
つまり、ターゲットとなる顧客のいる市場(事業ドメイン)の選定だけでなく、提供する価値として何を売るかということも戦略に含まれるといえそうです。

経営戦略がなぜ必要か

小さな会社だから経営戦略なんて必要ない、一つでも多くの商品を目の前のお客様に売れば良い、経営戦略の必要性に疑問を持たれる経営者様もいらっしゃるかと思いますが、果たしてそうでしょうか?

例えば、熱帯の国で防寒機能を持つ肌着を売ろうとしても売れないでしょうし、寒冷地帯であっても夏場は売れないでしょう。
目の前しか見てなければ、商品が売れない場合に宣伝が足らないのか、宣伝の手法が悪いのか、訴求している文言の問題なのか、営業の仕方が悪いのか、人員が足らないのか、といった見当違いの意見がでるかもしれません。

実際のところは、業種業態にもよりますが、オペレーションの改善によって売上が上がることも多々あります。
売上には1億の壁、3億の壁、5億の壁、10億の壁があると言ったりしますが、目の前の事象への対策だけでは越えられない壁に早々に突き当たるのは間違いがなさそうです。
だから、成長していくに当たっては、相応の戦略が必要だと言えます。

どういった戦略が中小企業に適しているか

経営戦略といっても様々な戦略があります。
戦略がたくさんあるということは、全ての企業にも適応でき、効果を上げられるような戦略がないということです。
しかし、中小企業にとって概ね適した戦略はあると考えられます。

では、そのような戦略が、中小企業にとって妥当性が高そうでしょうか。

広い市場を狙う戦略

大きな市場は売上が期待できると考える方は多いかもしれません。
確かに、市場全体から得られる売上の合計額は市場規模に比例します。

しかし、売上が期待できる市場に参入したいのは他社も同じです。
したがって、広い市場は必然的に競争が激しい市場となります。

競合よりも顧客を獲得するために、あるいは競合に顧客を取られないためにどういった施策を取る必要があるでしょうか?
宣伝広告に費用をかける…それはつまり宣伝広告費の分だけ利益が減るということです。
自社を選んでもらえるように販売価格を下げる…それもやっぱり利益が減る売り方です。
少しでも性能の高いものを開発する、より高い付加価値を提供する…開発コストを十分に売価に反映できるのであれば良いのですが、できないのであれば、コストが上昇した分だけ、利益が減る売り方です。

自らの利益を減らしてでもシェアを獲得していく、こういったやり方は競合にも簡単にマネができます。
ましてや、より大きな競合が経営資源に物を言わせて同様のやり方で攻勢を仕掛けてきたら、規模の小さい企業は太刀打ちできません。

以上の理由により、必ずしも広い市場を狙うことが中小企業に取って適しているとは言い切れません。

成長中の市場を狙う戦略

今後も成長が期待できる市場に参入することを検討するケースも多いかと思われます。
市場そのものが拡大しているので、市場シェアを拡大すればより多くの売上が期待できます。

しかし、売上が期待できる市場に参入したいのは他社も同じであることは前述した通りです。
必然的に競争が激しい市場となるため、生き抜くためにはそれ相応の施策が必要となりますが、広い市場を狙う戦略同様に、より大きな企業と競争をしても不利な状況であることは変わりません。

以上の理由により、成長中の市場を狙うことが中小企業に取って適しているとは言い切れないと言えるでしょう。

新市場の創出戦略

既存の市場では競合が多いために収益性が低いのであれば、競合のいない市場を自ら創出するという考えに至るのも当然かと思います。
中でも、要素を「減らす」「取り除く」ことでコスト削減を行いつつ、価値を「増やす」、新たな価値を「付け加える」ことで、競争の激しい環境(レッド・オーシャン)から競争のない未開拓の市場(ブルー・オーシャン)を切り開くという戦略は、ポピュラーと言えるでしょう。
先行優位を得られる可能性があるため、市場の成長と共に企業の成長も見込むことが可能です。

しかし、新規市場を切り開き、収益の柱となるだけの規模まで成長させるためには相応の経営資源と期間を必要とします。
成長させるだけの経営資源、成長するまで耐えられるだけの体力を中小企業が有しているのかという点が懸念事項として挙げられます。
資金に関しては、金融機関からの融資、ベンチャーキャピタルでの投資といった調達方法が考えられますが、現実的には評価も得られず、十分な融資や投資を受けられないことも考えられます。

ネット生保やLCCなど、ブルーオーシャンを切り開いても、結局レッドオーシャンになってしまった市場はたくさんあります。
それは、ブルー・オーシャン市場を創出したとしても、製品・サービスの模倣が可能であるため、市場に競合が参入するからです。
繰り返しになりますが、より大きな競合が経営資源に物を言わせて攻勢を仕掛けてきたら、規模の小さい企業は太刀打ちできません。

先行優位性を生かし、新規に参入する企業に対して競争しても勝てる状態を作り出すことができる、あるいは参入障壁を築くことができるのでなければ、新市場の創出が中小企業に取って適しているとは言い切れないと言えるでしょう。

ニッチ戦略

大きな企業を含む他社が進出していない隙間を狙って市場獲得していく戦略がニッチ戦略です。
市場の隙間のため、大きな企業もあまり目を向けません。
フィリップ・コトラーはニッチ市場について以下のように述べています。

当該ニッチの顧客は明確なニーズを持っている。顧客は、自分たちのニーズを最もよく満たしてくれる企業にプレミアム価格を払う。そのニッチが競合他社を引きつける可能性は低い。ニッチ企業は専門家によってある程度利益を得ることができ、そのニッチの規模や利益や成長には潜在性がある。セグメントはある程度大きく、通常は複数の競合他社が参入するのに対し、ニッチはきわめて小さく、1、2社しか参入しない。

フィリップ・コトラー『マーケティング・マネジメント』

収益が高く、競合がいないと良いことづくめな戦略と言えますが、狙ったニッチによっては市場が小さいのではないかと懸念されることもあるかもしれません。
しかし、中小企業にとってそれほど大きな市場規模が必要でしょうか?

売上高が10億円の企業にとって、何千億円、何兆円規模の市場は必要ではありません。
競合のいないニッチな市場でしっかりと足場を固め、手狭になってきたら新たなニッチ市場に対して別の付加価値を提供すれば良いのです。
一つの事業で大きな売上を上げるよりも、小さな売上がたくさんある方が経営の安全性は高くなります。

したがって、中小企業が成長を図るのであれば、ニッチ戦略が一番妥当性が高いと言えるのではないでしょうか。

結論

競合がいないのであれば、どのような戦略でも良いのかもしれません。
しかし、現実に競合は存在します。
今は競合が存在しなくても、参入するだけの規模が見込める魅力のある市場であれば、新たに参入しようとする企業は必ず現れます。

企業が成長するためには、できるだけ効率的に経営資源を使用しなくてはいけません。
つまり、競合との競争に経営資源を割きたくないはずです。

「競争に勝つ」というのではなく、「競争しない」というのが理想の状態です。
売上が伸び悩んでいるのであれば、オペレーションの改善や販売促進方法を検討する前に、自社の戦略を振り返ってみてはいかがでしょうか。