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中小企業はニッチ戦略を選択するべき理由

先日、中小企業に最も適した戦略はニッチ戦略であると書きました。
ニッチ戦略とは、規模の大きな企業や競合がいない隙間(ニッチ市場)に対して経営資源を投入し、ニッチ市場においてナンバーワンの地位を占める戦略です。
ニッチ戦略のメリットは、なんといっても収益性です。
では、なぜ収益性が高いのかの理由を説明したいと思います。

メリット①:競合の数

高い収益が期待できる魅力的な市場が存在したとしても、競合が多いために競争環境が激しいのであれば、それは望ましい市場とはいえないでしょう。
なぜなら、同一市場内における競合の数と企業の収益性は反比例するからです。

例えば、市場に自社しか存在しなければ、顧客の選択肢は「自社から購入する」「購入しない」の2つしかありません。
顧客の購入を促すための活動に集中できる環境と言えるでしょう。
それに対して、競合が1社存在すると、顧客の選択肢は「自社から購入する」「競合から購入する」「購入しない」の3つに増えます。
競合がさらに増えると、それに合わせて顧客の選択肢も増えることになります。

さらに、同一市場内に競合が存在する場合は、競合の動向に自社の行動が制限される、あるいは競合の行動に合わせて望ましくない行動を取らざるを得ない状況が発生します。
例えば、競合が宣伝広告を強化した場合、対抗するために宣伝広告を強化せざるを得ない状況になる、あるいは、競合が自社と同等の品質の製品・サービスをより安価に提供した場合、収益が下がるのが分かっていても顧客を競合に奪われてしまわないように、自社も追従して価格を低下せざるを得ないといったことです。

つまり、同一市場内に競合が存在する場合、自社を選ぶ確率が下がることになるだけでなく、競合の行動によって収益性が低下する可能性が高まることになります。
競合がいない、あるいは極めて少ない、ニッチ戦略だとこういったことが起こりにくくなります。

メリット②:市場でイニシアチブを取ることができる

競合がいないということは、市場におけるルールを自社が決めることができるようになります。
ジェフリー・ムーアは著書「ライフサイクル イノベーション」において、ニッチ市場において支配的な企業のメリットについて以下のように述べています。

ニッチ市場を支配するベンダーの製品は、その市場でのデファクト・スタンダードとなり、その結果、このニッチ市場に流通している他のシステムは、スタンダードに適合することを求められるようになる。そうすると、スタンダードとなった製品の信頼性はますます高まり、メインテナンス・コストは徐々に下がっていく。一般市場でどのようなバリューチェーンがスタンダードになっていようが、ここでは関係ない。

ジェフリー・ムーア『ライフサイクル イノベーション』

市場の顧客にとって自社が最適な選択肢となれば、競合が市場参入した場合でも競争優位性は維持されやすくなります。

メリット③:広告宣伝費

競合が少なく、市場でイニシアチブを取ることができる点に加えて、ニッチ市場は規模が小さいため、大きな市場で広告宣伝を行うよりも、費用が小さくてすみます。
つまり、広告宣伝に対する費用対効果が高くなるということです。

したがって、大きな市場で 同じだけの宣伝広告費をかけた 場合よりも収益性が高くなります。

メリット④:規模の大きな企業に対する安全性

他社に先駆けて、市場に対して新たな付加価値を提供したとしても、規模の大きな企業にとっても十分な規模の市場であれば、規模の大きな企業に模倣され、市場を奪われる危険性が付きまといます。
しかし、規模の大きな企業にとって十分でない小さい市場規模であれば、市場参入の魅力がないため、結果として市場を奪われる危険性が減少します。

また、大企業の戦略である、大量生産した同一製品の提供は、市場内の顧客ごとのニーズの差に対して細やかな対応が難しくなります。
それに対してニッチ市場の場合、顧客のニーズがより明確であり、個々の顧客のニーズが近しいものになるため、より高い満足の提供が容易になります。
言い換えると大企業がマスに対して60点、70点の製品・サービスを提供するのに対し、特定のニッチ市場のユーザーに80点、90点の製品・サービスを提供することも可能になります。
そうなると、市場のユーザーから見ると競合とは差別化された状態であり、必然的にユーザーから選んでもらいやすくなります。

結論

いかがでしょうか、いくら規模が大きくても、競合が多い市場は収益が低くなります。
その上、自社のシェアが奪われる危険性が常にあるならば、そういった市場に固執する必要もないでしょう。
中小企業は、自社にあったニッチ市場で他社と棲み分け、安全な環境で収益性を高めることに集中し、成長を図るという戦略の有効性が高いと考えられます。