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戦略のサイズ感

アカデミックの世界で経営戦略の権威と言えば、やはりマイケル・ポーターでしょうか。
同様にマーケティングと言えば、フィリップコトラーの名前が一番に上がると思われます。
他にも多くの学者・研究者がそれぞれ独自の理論を提唱しています。
では、それらの理論は中小企業にとっては有用なのでしょうか?

ポーターの3つの基本戦略では「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」「集中戦略」を基本戦略としています。
「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」は市場全体をターゲットとしていますので、その時点で中小企業のような市場全体にアプローチできない規模の企業を想定していません。

コトラーの競争地位戦略では、業界内のそれぞれの企業を「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」の4類型としています。
こちらも同様に「リーダー」「チャレンジャー」というのは経営資源が多いことが前提なので、中小企業を想定していないと言えるでしょう。

これらは一例ですが、アカデミックの世界で行われる研究は、主に大企業を研究対象としています。
大企業の方が情報を入手しやすいという理由が大きいからでしょう。

さて、規模の大きな企業を前提とした戦略は、中小企業では実行が難しいことが考えられます。
末松(1956)は大企業における近代的経営方法を中小企業に取り入れる場合、単に量的・費用的に修正すれば良いという訳ではなく、中小企業が経済構造の中で占める地位を認識したうえで、具体的な質的変化を伴わなければ、逆効果にさえなり得ると述べています。

また、末松(1972)は、大企業と比較して、中小企業の経営的性格として次の5つを挙げています。

(1)中小企業の経営者はワンマンであることが多く、したがってその成否は経営者の個人的能力に左右される。その特色は権力的、独裁的、温情的である反面に、機動性、原価意識、危険負担の勇気、根性、旺盛な責任感、創意工夫に富んでいる。
(2)中小企業の利用できる資本は少額であり、外部資本の調達能力が貧弱であるだけに、その活動分野は中小資本で操業できる範囲に限られる。これを無視して拡大しすぎると、重大な危険に遭遇せざるをえない。
(3)中小企業の成長性は、その企業が自主性独立性を具有しているか否かによって左右される(中略)
(4)中小企業は資本力が小さいだけに、その産業の市場が拡大しているときには新規の参入が大で、過度競争的性格を帯びやすい。(中略)
(5)中小企業にたいする環境変化の刺激または衝撃が大きく、それだけに環境変化への対応力をもつものと、もたないものとの格差が増大しつつある。(以下略)

(末松,1972,p.6-7)

末松(1972)は短所を中心に挙げているが、中小企業は規模が小さいからこそ有利な面もあります。

  • 意思決定から実行までのスピードが速い傾向にあるため、迅速な意思決定と行動が可能である。
  • 理念や施策を全社的に浸透させ、実行しやすい。
  • 戦略からオペレーションレベルまで施策を一貫させやすい。

経営戦略、マーケティング、組織戦略など、新しい理論が提唱されます。
自社に合ったサイズ感で、これらの長所を生かすことができる理論なら取り入れる価値があるのでしょうか。
成果に魅力を感じても、サイズが合わないものなら見送った方が良いかもしれません。