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時計産業の興亡

腕時計といえばどこの国を思い浮かべるでしょうか?
スイスでしょうか?日本でしょうか?それとも他の国でしょうか?
20世紀の時計産業の興亡には、今後の中小企業の参考になるのではないかと思い、紹介いたします。

クォーツショック

スイスの時計産業は有名ですが、実はアメリカも時計大国でした。
日本のSEIKOが1969年に世界初のクオーツの腕時計を発売し、クオーツの普及と量産化によるコストダウンが急速に進んだことで、安くて正確なクォーツ時計が市場を席巻しました。
その結果、機械式時計が主力だったアメリカとスイスの時計産業は大打撃を受けました。
セイコーのwebサイトによると、1970年に1600社以上あったスイスの時計企業が1980年代中頃には600社を割り込むほどだったようです。

まさにプロダクトイノベーションによって業界内の地殻変動が起きたと言える事例でしょう。
このシェアの大きな変動はクォーツショックと呼ばれています。

スイス時計産業の復興

コンサルタントのニコラス・G・ハイエックの案で、経営が行き詰まっていたオメガ、ティソなどを擁するSSIHと、ロンジンを中心としたASUAGが合併し、1983年にSMHという新たなグループを設立します。
これが後のスウォッチグループになります。

SMHは、50フランの安い値段のシーズン使い捨てアナログウオッチ「スウォッチ」を発売します。

部品点数の削減と合理的な生産システムによる大量生産によるコストダウンを図ります。
さらに重要なのは、ファッションブランドのようにシーズンごとに新作を発売し、売り切るようにしました。
また、全世界の大都市に「スウォッチ・ショップ」を展開、地域性のないグローバル・ブランドのマーケティングをしました。

これらによって、安くてもファッショナブルで、コレクションという楽しみもある新たな付加価値を作り出しました。
その結果、スイスの時計産業は復興することになります。

JETROの調査によると、2012年のスウォッチグループの売上は60億スイスフランで世界のメーカーごとの売上ランキング1位で、シチズンの約4倍、セイコーの約5倍の売上があります。

中小企業がやるべきこと

クォーツショックに対して、より性能が高いクォーツ、あるいはその他のムーブメントを作って日本の腕時計に対抗しようとはしませんでした。

もしこれが日本の企業であれば、より性能が高い製品を作って対抗しようとしていたかもしれません。
もちろん性能(機能的価値)は大事ですし、それ自体を高めることは否定しません。
しかし、スイスの時計産業は、相手が有利な相手と同じ土俵ではなく、全く別のフィールドの市場を創出することで、そもそも勝負をしないで復興しました。

安価な外国製品に市場を奪われる、これって日本の製造業がたどった道ですよね。
人件費の安い中国や東南アジアに対抗してより人件費を下げる…そんなことはできません。
性能を…そもそも日本企業でないと作れないほどの品質なんて求められているのでしょうか?

機能的価値を高める以外にはないのでしょうか?
機能的価値以外の価値を付与できないでしょうか?
機能的価値以外を求める顧客はいないでしょうか?

日本よりも人件費の安い中国や東南アジアの国々も技術力は高まっています。
そういった国でも市場が求める水準以上の品質のものが作れる製品であれば、日本企業もスイスの時計産業のようにパラダイムシフトをしていかないといけないのではないかと思いますがいかがでしょうか。