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機能的価値で勝負する危険性

複数の候補の中から商品を購入するに当たって、何を基準に選ぶでしょうか?
他の商品との共通の部分ではなく、違いの部分を判断基準にしませんか?
もちろん、その違いには、価値がないといけません。
では、どのような価値があれば、競合ではなく自社の製品・サービスを選んでもらえるのでしょうか。

価値の種類

製品・サービスの価値は、大きく機能的価値と情緒的価値に分けられます。
機能的価値とは、製品を使用することによって得られる、あるいはサービスを受けることによって得られる直接的成果や効果といえます。
それに対して、情緒的価値とは、大雑把に表現すると主に使用者の感情面の充足のための価値と言えます。

提供しているのが製品の場合は、競合の製品よりも性能を高めたり、機能を増やしたりすることによって差別化を図ることになります。
サービスの場合は、サービスの成果がより高い、あるいはサービス内容が豊富といったことによって差別化を図ることになります。
日本の大抵の工業製品は機能的価値のウェイトが大きいです。

情緒的価値による差別化で成功している企業としてAppleが挙げられます。
Appleが戦略的にやっていることですが、Apple製品にはスタイリッシュやおしゃれなイメージがありませんか?
WindowsマシンとMacを比較したら、同価格帯なら明らかにWindowsマシンの方がハイスペックです。
しかし、Macユーザーは機械としてのスペックを比較して買ってはいないでしょう。

機能的価値の特徴

デービッド・アーカーは(1996)は、機能的便益はしばしば差別化できず、模倣されやすいと述べています。
確かに、独占的な技術やノウハウがある、あるいは独占的な仕入れルートを持っているなど、他者が模倣できない経営資源があるなら別ですが、同程度の技術があれば提供できる機能や性能であれば、他社も模倣することが可能です。

また、ヤンミ・ムン(2010)は以下のように述べています。

10年前、ボルボは実用性と安全性で知られており、アウディはスタイリッシュさで知られていた。最近では、アウディは安全性テストでボルボをしのぎ、ボルボの広告はスマートな走りを演出している。
このダイナミクスは、人気投票と似ている。誰もが爽やかで朗らかで親しみやすい人間だとアピールして勝とうとする。選挙もまた、候補者がみな、魅力的で謙虚で真面目でタフであろうとする。全員が同じ方向を目指せば、誰も抜きんでることはない。
(中略)
消費者に尋ねるということは『まだ手に入れていないものは何か』だけではなく『競合他社が何を提供しているか』を聞くのに等しい。これが市場調査の問題点である。こうして、アウディのように走るボルボ、ボルボのように走るアウディが誕生する。

ヤンミ・ムン『ビジネスで一番、大切なこと』

引用した例は市場調査の問題点として書かれているものの、性能面や機能面での競争の問題点を指摘しています。
元々は差別化されていたにも関わらず、お互いが競合製品に劣っている部分を補完することで性能や機能を高めようとすると、その結果、製品はコモディティ化してしまうことを示しています。

性能や機能に差がないのであれば、安いものを選択するのが合理的な判断です。
つまり、模倣されて(し合って)コモディティ化した市場においては、最終的に価格競争に陥ってしまう可能性が高いと言えます。

性能や機能に差がある場合

では、コモディティ化しない程、競合製品と性能や機能に差があった場合は安全だろうかというと、決してそうであるとも言い切れません。
開発費用や製造費用を価格に反映させるため、一般的に性能の低い製品は安価であり、それに対して高性能の製品は高価となります。
つまり、一般的に性能と価格は正比例の関係にあると言えるでしょう。

しかし、市場は常に無制限に高性能の製品だけを求めている訳ではありません。
要求している水準を超えた製品であれば、どれだけ性能が高くても意味を持たなくなります。
そして、水準を超えた製品の中で一番安価なものを選択するのが合理的な判断となります。
業務に使用するのに十分な性能のPCが10万円で売っていたとして、その5倍の性能のPCが40万円で売っていたら、高い方を買うか?ということを考えたらわかるかと思います。

上の図でいえば、市場が要求している性能の水準を上回っているのは製品C及び製品Dです。
どちらも水準を上回っているということは、どちらを選んでも買い手の性能に対する要求を満たせるため、双方の性能差は選択基準において意味を持たなくなります。
したがって、合理的に判断を行うと、価格の安い製品Cを選択することになります。

機能的価値の問題点

繰り返しになりますが、機能や性能を高めて競合に勝とうとすると、結局は価格勝負になってしまいます。
同価格帯で一番性能の高いもの、同じような性能・機能であれば、その中で一番安価なものを選択するのは価格と性能・機能の関係性において合理的だからです。

高い性能や機能の製品を提供するには、開発や生産によりコストがかかります。
サービスも同様で、高い技術を身につけるまでのコストがかかっています。
しかし、要求水準を超えている場合、その中で一番安価なものを選択するのであれば、コストを売価に反映できないことになります。

コストをかけて競合よりも機能的かつの高い製品を開発しておきながら、安価に売らなくてはいけないというのは、中小企業には現実的ではありません。

また、収益性の低下は、経営において様々な面に悪影響が及部可能性があります。
例えば、薄利で販売することで収益性が低下した結果、人件費が抑制されることになり、優秀な人材を採用することが難しくなる。
それにより、開発力の低下や営業力の低下といった負の循環に陥る危険性が生じる、といったことが考えられます。

結論

日本は技術立国であり、技術の向上を否定するものではありません。
また、企業同士が自社製品の性能面での競争を行うことにより市場に流通する製品の品質が高まり、顧客はその恩恵を受けるという点においては性能面での競争もまた否定されるものではありません。
しかし、性能が高ければ、機能が豊富であれば売れる、収益が高いという訳ではないことは上記した通りです。

中国や東南アジアの国の技術力が高まり、一定水準以上の製品を作ることができるカテゴリーにおいては、価格で勝負はできません。
今後の日本企業は技術だけでなく、情緒的価値を戦略的に提供する必要があるでしょう。
機能的価値の高いもの=良いものと定義して、良いものを提供していけば良いと考えているのであれば、生き残っていくのはますます難しくなっていくと考えられます。