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経営におけるデザイン活用②

「デザイン」という言葉を聞くと、製品の審美性を高めることのみが目的であるというイメージを持たれているのではないでしょうか。
デザインに対する誤解を解くとともに、経営におけるデザイン活用について述べます。
2回目となる今回は、経営においてデザインがどういった役割を担うのかという点をテーマにしたいと思います。

経営におけるデザインの役割

Best(2006)は、デザインは組織において企業戦略レベル、事業単位(戦略)レベル、業務(機能戦略)レベルの3つのレベルでそれぞれ活躍する可能性があるとした上で、以下のように述べています。

 デザインはコーポレート・アイデンティティなどにおいて組織のビジョン、価値、信条を表現する。次に事業単位レベルでは、デザインは事業単位の目標達成を助けるために戦術的に使われる。たとえば組織は新しい市場に参入するときに、競合他社との比較のためにデザイン評価を実施することがある。3番目に、業務レベルでは、日常の業務、製品やサービスの開発プロセスを改良する場にデザインが存在する。
『デザインマネジメント 』 美術出版社, 2008

事業単位レベルとは企業戦略や事業戦略、それに対して業務レベルとは実際のオペレーションと捉えることができるでしょう。
それぞれにおいて、デザインが活用されると述べています。

また、加藤(1981)は、一般的な企業イメージはベーシックエレメント、ビジュアルアプリケーション、環境および非ビジュアル要素によって構成されていると述べています。

ベーシックエレメント 社名、シンボル・マーク、ブランド、ロゴタイプ、コーポレートカラー(社色)、タイプフェース、コーポレート・ステートメント、など
ビジュアルアプリケーション ビジネスペーパー、ステーショナリー、カタログ、セールス・プロモーション、包装、看板、サイン、車両、輸送機器、ユニフォーム、ディスプレイ、広告、など
非ビジュアル要素 エクステリア、インテリア、セールス・トーク、電話の対応、接客、勤務態度、トップ及び社員の言動、など

出所:加藤(1981)p.75を基に筆者作成

ベーシックエレメントは、Best(2006)が述べるところの戦略レベルにおけるイメージが反映されたものであり、ビジュアルアプリケーションは業務レベルの要素を具現化したものと言えるでしょう。

高級ブランド、及び高級ブランドのショップをイメージしてください。
社名、ロゴタイプ、コーポレートカラーなどのベーシックエレメント、包装、看板、ディスプレイなどのビジュアルアプリケーション、従業員のホスピタリティーや接客態度など、全て価格に見合ったものであるはずです。

このように、企業活動において一貫性のある行動が必要であるように、企業のロゴから製品、販促用のチラシに至るまで、顧客との接点となるものもまた、理念や戦略を反映した一貫性のあるデザイン、TQM(Total Quality Management)のデザイン版とも言うべき、デザインの全体最適化が必要です。

企業戦略レベル・事業戦略レベルでのデザイン活用

普段の事業活動を遂行している中で、ブランディングや差別化が自然になされるということも否定はできません。
しかし、企業の経営においては、成り行きに任せるのではなく、自社の戦略に基づいた方向に自社のイメージをコントロールしていく方が望ましいことは言うまでもありません。
そのためには、顧客や競合などの企業の外部と社内に対して、自社が伝えたいと考えるイメージを伝達する必要がありますが、イメージを具現化することでより明確になり、伝わりやすくなります。

戦略に基づいて企業内外に訴求したいイメージを可視化するため、ビジュアル・アイデンティティ(Visual Identity,略称:VI)に基づいて制作されるロゴデザイン、会社案内、webサイトなどはデザインが大きな役割を担っています。

例えば、社章や制服は社外に対してはブランドイメージを訴求し、社内に対しては会社の一員である自覚と一体感を生むことを目的に活用されています。
このように、社内外の両方に対する効果を見込んでデザインを活用することもあります。

オペレーションレベルでのデザイン活用

製品やプロモーションにおいて、デザインが大きな役割を担っていることは誰もが認識していると思いますが、製品自体だけでなく、パッケージに施されたデザインも重要な役割を担っています。
パッケージは、運搬時における内容物の保護や利便性を向上する役割を持つだけでなく、店舗に展示される際には製品そのもの訴求やブランドイメージ向上、競合製品との差別化という役割も持っています。

Kotler(2003)は、デザインのすぐれたパッケージは利便性及びプロモーションとしての価値が高く、製品のパッケージは買い手と製品との最初の出会いであり、購買意欲に影響を与えると述べています。

有形財を提供する事業者と無形財を提供する事業者とでは、デザインの目的と使用する範囲も異なります。
無形財は「無形性」「不可分性」「変動制」「消滅性」という特徴を持ちますが(Kotler,2003)、特に財の価値を訴求するにあたって、有形財なら実物を見たり試供してみたりするなど、購入前に情報を提供することも可能です。
しかし、無形財の場合は、その価値を何らかの形…特に視覚に訴える形で伝える必要があり、その際にデザインの活用が重要な役割を担うことになります。

デザインの活用は社外にメッセージを発信するためだけに使用されるのではなく、社内に対して何らかの効果を求めて使用することもあります。
例えば、製品の製造現場において、出荷する製品と再検査品など、後工程ごとにパレットの色を変えることで不良品の出荷の防止、検査漏れの防止を図っている企業もあります。