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経営におけるデザイン活用③

「デザイン」という言葉を聞くと、製品の審美性を高めることのみが目的であるというイメージを持たれているのではないでしょうか。
デザインに対する誤解を解くとともに、経営におけるデザイン活用について述べます。
3回目となる今回は、経営資源の乏しい中小企業がデザインを活用するメリットをテーマにしたいと思います。

開発にあたってイノベーションを必要としない

Moore(2005)は、イノベーションには14のタイプがあるとして、それらをさらに4つのグループに分類しています。
下の表をご覧ください。

製品リーダーシップ・ゾーン 破壊的イノベーション
アプリケーション・イノベーション
製品イノベーション
プラットフォーム・イノベーション
顧客インティマシー・ゾーン 製品ライン拡張イノベーション
機能強化イノベーション
マーケティング・イノベーション
顧客エクスペリエンス・イノベーション
オペレーショナル・エクセレンス・ゾーン バリュー・エンジニアリング・イノベーション
インテグレーション・イノベーション
プロセス・イノベーション
バリュー・マイグレーション・イノベーション
カテゴリー再生ゾーン 自立再生イノベーション
企業買収再生イノベーション

Moore(2005,栗原訳,2006)p.80の表を基に作成

全てのイノベーションについての詳細は割愛しますが、これら14種のイノベーションの内、製品リーダーシップ・ゾーンに属する4種のイノベーションは製品・サービスそのものの開発に係るイノベーションだとしています。

破壊的イノベーション 今まで存在しなかったテクノロジーやビジネスモデルによって新しい市場カテゴリーを創出する。
アプリケーション・イノベーション 既存のテクノロジーの新規の応用分野によって新規市場を創出する。
製品イノベーション 既存製品に対して今まで存在しなかった機能を追加する。
プラットフォーム・イノベーション パートナーと共に新たなプラットフォームを構築する。

Moore(2005,栗原訳,2006)p.81-84を基に作成

Moore(2005)は、製品リーダーシップ・ゾーンに属するものは製品・サービスすべて多大な研究開発投資を要し、市場でのリスクも大きいとしています。
つまり、製品リーダーシップ・ゾーンに属するイノベーション──一般的にイメージされると思われるこれらのイノベーションは、経営資源に乏しい中小企業には実現が難しいと言えるでしょう。
仮に可能だったとしても、それは限られた企業においてのみで、多くの企業では実践できないと考えられます。

それに対して、既存の製品にデザインを付与することで、付加価値の向上を図るということは、必ずしも技術面での高度化やユニークな機能・性能の付与、生産プロセス・販売(流通)プロセスの改善・改革を伴いません。

つまり、新規製品を市場に投入するにあたって、高度な技術や設備を持たない、あるいは少ない資源しか持たない規模の小さな企業にとって、実行できる可能性が高いことを意味します。

これは開発面において有用であるが、選択肢が増えるという点で企業戦略面、事業戦略面においても有用であると言えるでしょう。

開発期間が短い

既存製品よりも機能が高い、あるいは機能面において差別化された新規製品を開発する(以下、通常の新製品開発)よりも、既存製品にデザインを付与した新規製品の開発の方が短い期間で実現することができます。

そのため、前者を開発した場合と比較して、より早く市場へ製品の投入をすることが可能になるため、速度の経済性が得られやすくなります。
また、開発期間の短さは市場の変化に対して適切な対応を行いやすくなり、通常の新製品開発よりも需要の変動・変化への対応がしやすいため、収益性や経営の安全性が向上します。

経営戦略面や市場への製品の投入の判断のような、事業戦略面において有用であると言えるでしょう。

開発コストが少ない

開発期間が短いということは、通常の新製品開発よりも開発のために投入するコストが少なくなります。
この点は中小企業にとって実現可能性を高める要因となるでしょう。

また、プロジェクトの失敗、販売の中止時のサンクコストも相対的に少なくなるため、収益が見込めない時の開発中止の判断、収益が低下した際の市場からの撤退について、より的確な判断を行いやすくなることも考えられます。
したがって、経営の安全性も通常の新規製品開発よりも高まります。

経営資源配分や市場からの撤退の判断など、企業戦略面、事業戦略面において有用であるといえるでしょう。