リスクへの対策

リスクとは?

リスクとは何でしょうか?
デジタル大辞泉によりますと、以下のようにありました。

1 危険。危険度。また、結果を予測できる度合い。予想通りにいかない可能性。「リスクを伴う」「リスクの大きい事業」「資産を分散投資してリスクの低減を図る」

2 保険で、損害を受ける可能性。

1の方が通常イメージする「リスク」だと考えられます。
結局のところ、予測できるのか、予想通りいかないのかよく分かりませんが、ともかく起こって欲しくないことであることは間違いないようです。

事業をやっていると、必ず大なり小なりのリスクを負います。
不意に起こるもの、予め予想できるもの、色々あろうかと思います。
例えば、台風が来るのは毎年のことなので想定はできるかもしれませんが、列車事故はいつ起こるのかを予想できません。

また、リスクには人災のように発生をコントロールできるものと、天災のように発生をコントロールできないものがあります。
さらに、発生した時のダメージをコントロールできるものとできないものとがあります。
それぞれどのように対策をすれば良いのでしょうか。

リスク対策のマトリックス

まず、発生可能性×発生時のダメージのマトリクスを作成します(下図)。
発生可能性を大小の2段階、ダメージの大きさを大小の2段階という簡易なものから、3段階、5段階と、もっと細かくしても結構です。

次に、それぞれ段階の基準を設定します。
可能性は頻度で、ダメージは経営面におけるインパクトで考えると分かりやすいでしょう。
例えば以下のような感じです。

発生可能性(小)…数年に1度
発生可能性(中)…1年に1度
発生可能性(大)…数か月に1度以上

ダメージ(小)…業務の停止1日未満
ダメージ(中)…業務の停止1日~2日
ダメージ(大)…業務の停止3日以上、あるいは業務続行不可能

リスクと成り得る事象を挙げ、基準と照らし合わせてマトリクスのそれぞれの象限に配置します。

リスク対策の考え方

それぞれ、発生可能性を下げる方法と、発生した際のダメージを下げ、発生可能性…小、発生時のダメージ小に近づく方法を考えます(下図)。

可能性・ダメージ共に小のポジションに移動することが理想ではあるのすが、天災にように発生可能性をコントロールできないものは、保険に入るなど、発生した時のダメージを軽減する手段を考えることになります。

このように予め予想できるリスク対策を検討することで、望まない事象が起きないように、また起きた時のダメージを小さくなるように、ある程度のリスク対策をすることが可能です。
無理のない範囲で、リスク対策を検討されてはいかがでしょうか?

士業の差別化

士業になっても食えない、資格だけではやっていけない…士業を目指す人はこういう意見を耳にしたこともあるでしょう。
資格を持っているだけで仕事が得られるのであれば、大勢の人がその資格を取得します。
その結果、供給過多になって一人当たりの収入は下がるというのは、経済学の基礎の基礎みたいな話です。

新規に参入しても、すでに市場には先行していて実績のある競合がたくさんいる訳で、顧客は実績のある方に頼むのが普通です。
税理士のように、取り立てて顧問先を変えるインセンティブがない場合は、新規参入者の顧客獲得が特に大変かもしれません。
これが資格を取っても食えないなどと言われる理由の一つにもなっているのかもしれませんが、これは大きな前提を基にしています。
それは、新規参入者も既存の参入者と同じことをするということです。
同じ仕事を取り合う結果、値段勝負になるか実績のない人には仕事の依頼がないということになります。

別にこれは士業に限った話ではありません。
価格が同じで、提供している価値に競合と比べて特徴がなければ、顧客から選ばれる理由がありません。
言い換えると顧客から選ばれる理由は、競合との差異だということになります。
もちろん、その差異に価値があることが前提なのは言うまでもありません。

では、どこで競合と差異を作るのか。
同じ資格を目指している訳ですから、勉強する内容には大きな差はないでしょう。
従って、資格を取るために勉強する中で得る知識は差別化要因になりにくいです。
資格取得後に得る知識やノウハウはキャリアの長さが経験の量に繋がり、それが差を生み出す要因になりますが、新規参入者やキャリアの浅い人は差別化が難しいことになります。

弁護士や会計士は、学生時代からそれらを目指し、新卒で事務所に入所する人が多いため、資格取得前に社会人経験のないケースもあります。
しかし、多くの士業に関しては一度社会に出てから資格を取得するケースが多いので、何らかの経験があるはずです。
つまり、資格取得前に持っていたスキルやノウハウが同じ資格を持っている他の人との差別化要因となります。

どのような事業でも、他者と同じことしかできないのであれば、顧客から選ばれないのは至極当たり前の話です。
しかし、それは士業が食えないということとイコールではありません。
他の人と同じ付加価値しか提示できないのであれば、士業である前に一人の経営者として能力がなかったのかもしれません。
だとしたら、やっぱり食べていくことはできなかったということになるのではないでしょうか。

あなた達と付き合いたくなかったれど

事業を始めるにあたって、様々な準備が必要です。
店舗なら物件を探したり、工事の見積を取ったりしますし、他にはドメインを取ってwebサイトを作ったり、名刺を作ったり、事業によって様々です。

起業して間がない時は、知人や知人の知人など、自分に近いところからの集客が一つの柱になろうかと思います。
専門性の高い職種でしたら、同業種からの下請けや、忙しくて手を借りたい時に声をかけてもらうということもあるでしょう。
同業種から受注、紹介をしてもらうためには、すでに知り合っている上で、かつ一定以上の評価をされていなければいけません。
仕事を依頼する側、顧客の視点で考えるとイメージしやすいと思いますが、知らない人に仕事を発注できませんし、一回名刺交換をしただけの人にも普通は仕事を発注しません。

同業者からの受注を考えているのなら、同業種内の普段からの人付き合いが大切ということになります。
起業してからもネットワークづくりを行必要があるのは言うまでもありませんが、起業準備としてのネットワークづくりも必要でしょう。
起業してからネットワークを作り始めるというは、
「私はあなた達と付き合いたくなかったれど、起業して仕事が欲しいので付き合うことにしましたので、良い話があったら声をかけてください。」
と言っているのと同じではないでしょうか。

起業のための具体的な準備の内容は事業によって異なりますが、売上を作る準備をしなければいけないのはどのような事業でも共通のはずです。
デザイナーやプログラマーのような、業務で社外に出る機会が少なく、同業者とのネットワークを作りにくいなら、在職中の間に積極的に同業者の集まりやコミュニティに顔を出しネットワークづくりをする必要があります。
むしろ、ネットワークづくりこそ、在職中に実行しやすい準備とも言えるのではないでしょうか。

労働生産性

日本生産性本部の調べによると、2016年の日本の就業者1人当たり労働生産性の労働生産性はOECD加盟35ヵ国中20位で、1位のアイルランドの半分以下となっています。
国によってそれぞれ事情も違うでしょうから単純比較はできないかもしれません。
実際、日本の労働生産性に関しては、色々な人は色々な意見を述べていますが、日本の労働生産性がさほど高くはないというのは違いないでしょう。

就業者1人当たり労働生産性は、GDPを就業者数または労働時間で除して求めます。
つまり、同じものでも安く売れば、高く売るよりも労働生産性は低くなるということです。
意地の悪い言い方をすると、大手企業が下請けいじめをすれば、それだけ労働生産性は上がらないことになります。

手間に対して利益を得られない過剰なサービス、安価に生産できる体制ではないのに安価に販売するといった、無計画な安売り、成果の得られない会議も労働生産性は低くなる原因です。

少子高齢化で労働力の確保が難しくなっているのに、何もやり方を変えなければ、ますます労働生産性は下がっていくでしょう。
しかも、最低賃金は上がっていきますので、企業の利益は下がっていきます。
何もしなければ、余計に対策が難しくなります。

今がそのタイミングなのかは企業によって違うでしょうが、本気で生産や作業効率を高める、あるいは製品・サービスの付加価値を高めて、労働生産性を上げる取り組みをしていく必要があるのではないでしょうか。
しかもそれはAをA’にするようなマイナーチェンジではなく、ドラスティックな改革かもしれません。

差別化の達成

差別化の達成

事業において大企業、しかも市場のリーダー企業であれば別かもしれませんが、競合と差別化されていることが重要であることに異論はないでしょう。
差別化されていなければ、価格競争に巻き込まれやすくなり、収益性が下がってしまいます。
中小企業であれば、尚のこと差別化が重要だと言えるのではないでしょうか。

ジェイ・B・バーニーの提唱したVRIOフレームワークというものがあります。
経営資源、ケイパビリティ(組織的な能力)が競争優位性を持つかということを、価値、希少性、模倣困難性、組織の4つの視点で見るフレームワークですが、詳細は割愛します。
経営資源やケイパビリティだけではなく、提供している製品・サービスも、価値、希少性、模倣困難性、組織の4つの視点で見ることができると思います。

さて、差別化とは競合と違っていればよいものではなく、価値を伴ったものである必要があります。
また、差別化できているのであれば、希少性も備えていると言えるでしょう。
一時的な差別化では意味がありませんので、模倣困難性を伴ったものである必要があり、差別化された製品・サービスを提供し続けることができる組織である必要があります。

では、これだけでOKなのでしょうか?

差別化されていると判断するのは誰ですか?
製品・サービスを提供する側ではなくて、顧客の側です。
つまり、差別化されていることが、顧客に伝わらなければいけないということです。

差別化が重要、それは違いが顧客に伝わって初めて達成することだと言えるでしょう。

差別化

差別化

顧客から選ばれるためには、競合と差別化ができていないといけません。
これはどなたもご納得いただけることかと思います。

差別化も、大きく2つに分けられるかと思います。
そもそもドメインがことなるなどの企業(事業)レベルでの差別化と、製品やプロモーションといった機能戦略・オペレーションレベルでの差別化です。

前者は競合がいない戦略を取っており、後者はドメイン自体は競合と同じですから競合がいることを前提とした戦略になるでしょう。
だとすれば、前者の方が競合がいない分、収益性も高いことが考えられます。

競合がいなければ、顧客は購入するか、あるいは購入しないかの2つの選択肢しかありません。
顧客に対して購入を促すように働きかけることに集中できます。
しかし、競合がいれば、自社から購入するか、競合から購入するか、購入しないかの3つの選択肢になります。
競合が増えるほど、顧客側の選択肢が増える…つまり、自社が選択される率が下がるということです。
競合の動きに合わせた行動を取らざるを得ないなんてことも発生しますので、競合が多いほど効率性や収益性は下がります。

機能戦略・オペレーションレベルでの差別化ではなく、企業(事業)レベルでの差別化が必要であることはご納得いただけるかと思います。
では、それだけで必要十分なのでしょうか?

どこがどう差別化されているのかを認知しないといけないのはステークホルダーです。
ですから、ステークホルダーに他の企業とは違うという点を訴求する必要があります。

経営やマーケティングなどのビジネス書や学術書の場合、戦略レベルのことは詳しく書いてあっても、実行レベルのことには触れられていないものも多いです。
その点は自分で考えなければなりません。

さて、どうやって差別化を実現し、認知させましょうか。
アイデアやプランはちゃんとおありでしょうか?

数字の比較

数字の比較

海東一の弓取りと称された今川義元が上洛のために東海道を上る最中に、織田信長に敗れた桶狭間の戦いは特に歴史に詳しくない方でもご存知でしょう。
今川義元は駿河・遠江・三河の三国を収めていたのに対して、織田信長は尾張一国のみ。
圧倒的な相手に対して奇襲作戦で…というのが一般的な認識でしょう。

治める国の数は3対1ですが、はたして国力も3倍異なったのでしょうか?
桶狭間の戦いのあった永禄3年(1560年)の石高は不明なのですが、太閤検地(1598年)の時の駿河・遠江・三河の石高は3か国で70万石、それに対して尾張の石高は57万石だったとのこと。
もちろん、今川義元の所領の方が石高は高いのですが、石高を比較しても3倍もの差はありません。

さて、経営を行うにあたって、定量面で比較することは多々あります。
ベンチマークとしている企業の売上や利益、あるいは自社の昨対比、個々の売上目標など、挙げだすときりがありません。
では、その数字の比較は妥当なものでしょうか?

例えば部門ごとに売上高を目標にするというのはよくある話ですし、妥当性もあります。
しかし、数字だけを見ても短期的な売上での上げ方で、いつまで続くのか分からない状態なのか、顧客と長期の取引関係を築いているのかは分かりません。
ありがちな話として、営業担当者が顧客獲得のために大幅にディスカウントしていて、売上はあがっているけど利益が出ていないということがあります。

比較をするなら適切な数字と数字以外の要素も考慮に入れないと、売上が上がっているのに儲かってないなんてことにもなりかねません。
数字は適切に管理されていますか?

経営戦略のフィット感

経営戦略のフィット感

古今様々な経営戦略、手法が生まれています。
しかし、それは企業の規模や条件に合ったものなのでしょうか?

アカデミックな世界で経営学者が提唱したものは、どういった規模の企業を想定しているのでしょうか。
サンプルの得やすい大きな企業をベースにした戦略をそのまま中小企業がやったとしたら、それはちゃんと機能するのでしょうか?
また、成熟した市場に基づいて検討された戦略は、成長市場においても有用なのでしょうか?
最寄り品市場を想定した戦略は、買い回り品市場において役に立つのでしょうか?

例えば、ブルーオーシャン戦略を全ての企業が実践できるのでしょうか?
事例に上がっている企業の規模、市場はどうでしょうか?
小さな企業には死の谷やダーウィンの海を乗り越えて、オーシャンを築くまでの企業体力があるのでしょうか?
金融機関はどこまで融資をしてくれますか?

どのような戦略も実行できる企業には条件があります。
何かで成功した企業があるとマスコミは騒ぎ立てることがありますが、新聞・雑誌のスペースを埋めるために、TVの時間を埋めるために軽佻浮薄に騒ぎ立てていることを忘れてはいけません。

あくまでも戦略は目標を達成するために手段ですから、適切な手段は企業によって異なります。
自社に合った戦略を選ぶ、言葉にすれば当たり前だと誰もが思うはずです。
自社に合うかどうかというチェック項目はちゃんと用意されているでしょうか。

猛獣

猛獣

アクが強い、パンチが利いている、猛獣…これらは複数の方が自分の知っている女性経営者を指して言ったことです。
別に悪く言っている訳ではなくて、それぐらいの人でないと起業はできないという文脈です。
会社の枠に収まり切れず、また安定した境遇を捨てて世の中に打って出ようという気概と実行力が、こういった表現になるでしょう。

さて、昨今副業を認める動きが盛んになっています。
もっとも、副業と言っても色々な形態があるかと思いますので、労働力を提供して給料をもらうものではなく、自ら付加価値を生んで報酬を得るタイプものをこの記事では指します。

本業で得たスキルを活かして副業を行って収益を得たい、資格を生かして副業を行って収益をたい、同機は色々あるかと思います。
しかし、仕事を頼む人は自身の利益になるから依頼する訳です。
だから、実績のある人に頼みたいし、副業で(片手間に)やっている人ではなく、主業としてやっている人に頼みたいはずです。

ただ副業を始めましたと言っても、誰も仕事を頼まないでしょう。
仕事を頼む側からすると、実績のある人がいくらでもいる訳ですから、あえて主業ではなく副業の人に頼むメリットが薄いからです。
言い換えると、主業でやっている人との競争を避けられるようなこと、あるいは競争しても勝てることでないと仕事を得ることができません。

会社勤めを辞めて起業をする人は先ほど書いたようにアクが強い、パンチが利いている、猛獣と言えるような人でないと駄目だとすると、副業の人はどうなのでしょうか?
副業にどこまで求めているのかは人によって異なるでしょう。
しかし、ちゃんと業としてやっていくのでれば、企業か同様にアクが強い、パンチが利いている、猛獣と言えるような人でないと駄目なのではないでしょうか。

主君を7度変えねば武士とは言えぬ

主君を7度変えねば武士とは言えぬ

日本人が誤解していることの内の一つとして「武士道」が挙げられるのではないかと思います。

「武士道」と聞いて思い浮かべるのは、新渡戸稲造が著した「武士道」や山本常朝の「葉隠」でしょうか。
前者は、あくまでも海外に日本を紹介するものであり、実際の武士が規範にしていたものを編纂したものでもなんでもありません。
後者も序文の「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」が独り歩きしていますが、ちゃんと読んだことがある人はほとんどいないでしょう(私は途中まで読んだのですが、面白くなくて投げました)。
実際の武士も「武士道」という言葉を使用して、あれこれ解いてはいますが、統一された定義などもありませんし、何をもって「武士道」なのかも全然異なります。

戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で藤堂高虎という人がいました。
七回も主君を変えたことが有名ですが、七回も主君を変えるなどということは、一般的にイメージされている(誤解されている)「武士道」の定義には当てはまらないのではないかと思います。

さて、業種や職種によっては人材の流動性が高いものもあるでしょう。
そういった業種の企業、あるいは職種の従業員に対して定着のための施策を取られているでしょうか?
あるいは、中小企業は属人的な能力に頼っている部分も多いため、誰かが辞めてしまうと、それだけで受託できなくなる仕事がある、などといったこともありえます。
辞めることを属人的なスキルを組織のスキルとしてしまうといった、対策を考えていますか?

転職の理由は様々で、会社に原因があるとも限りませんので、100%防ぐことはできません。
だからといって何もしなければ従業員は定着しません。
それでも新しい従業員をどんどん雇えるというならいざ知らず、人手不足のご時世ですから、辞めたら次の人をという訳にはいきません。

転職する従業員も、同業種に転職する可能性も十分考えられます。
自社のノウハウを持った従業員が他社に行ってしまうとなる訳ですが、その企業にとっては新たなノウハウを得るというメリットがあります。
その結果、相対的に競合との差がついてしまうことになります。

先ほど挙げた藤堂高虎は七回も主君を変えたといっても、主君を裏切ったり、寝返ったりしたことはありません。
そうでなくとも、機会があれば七回も主君を変える訳です。
従業員だって何が原因でいつ退職するかは分かりません。

従業員は就職したらずっと辞めないという意識でいませんか?
ちゃんと対策を取られているでしょうか?

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