プロは素人

ある業務のプロも、他の業務では素人です。
素人がプロの仕事に口を出して、それがまかり通ってしまったら、結果が悪くなるのは想像に難くないでしょう。

一つの店にイタリア料理のコックと中華料理のコックがいたとします。
お互い、相手が作る料理のことはよく分かりません。
イタリア料理のコックは中華料理の素人なのに、中華料理のコックの作った料理に対して「自分はイタリア料理のコックとして優れているから」と口出しする…文字で書いたらおかしいと分かりますが、企業においてはこういったことは珍しくないのではないですか?

プロは素人

例えば、システム会社が事業領域拡大でWebデザインも行うようになると、デザインに強いシステム会社(システムに強い制作会社)になれるかもしれません。
しかし、そのためにはシステムを構築するプログラマー側とデザイナー側の両方を統括できないといけません。
この例だと、プログラマー側がイニシアチブを取って(これ自体に問題はないのですが)、デザインの制作進行などを知らないのにプログラマーの常識でプロジェクトを推し進めたり、クライアントに見せる前のチェックをデザインのことが分からないプログラマーがチェックすると、上手く行かないのは当然です。
逆もまたしかりです。

プログラマーとデザイナーの両方をちゃんと統括できれば、シナジー効果で制作物の付加価値は高まり、単価も上げられるでしょう。
実際はプログラマーの作った物に色を付けただけ、ユーザーのことも考えていないインターフェース、もちろんユーザーの問題点も解決しない…なんてことにはなっていないでしょうか?

実際に業務をやっている当の本人には見えない、分からないことがあるので、大局的に全体を見る人が必要なのですが、プログラマーは当然プログラマーとしての視点しかありませんし、デザイナーにはデザイナーの視点しかありません。
そうなると、プログラマーとデザイナーを束ねることができる人が管理者(ディレクター)になって進捗管理をしないといけないという話になります。
しかし、面倒なことにプログラマーもデザイナーも技術者なので、専門的な知識や技術がある人がスゴい、あるからスゴいと思いがちなのではないかと感じています(これは物を作る人にありがちな欠点だと思います)。

そのため、専門技術が必ずしも不要で、別の能力が求められるポジションに、専門的な技術の高い人が就いてしまい、またそれに疑問を抱かない。
その結果、1+1が3にも4にもどころか、2にも達していないという結果になってしまっているのではないでしょうか。

プログラマーとデザイナーで例えましたが、特にIT業界ではよく見られる事象ではないかと思っています。
ですが、他の業界でもこういったことはあるだろうと想像できますが、いかがでしょうか。

良い循環、悪い循環、普通の循環

良い循環、悪い循環、普通の循環

10万円分の料金で、20万円分のことを要求されたらどうしますか?
提供する価値と料金が釣り合わないと損をする訳ですから、聞くまでもなく普通はそんな依頼は受けませんね。
ですが、従業員への要求で同じことをやっていませんか?

実際の例ですが、ECに進出したいが、成功の可能性も分からない。だから担当者は契約社員として雇用するというケースや、売上に直結しているような業務をちゃんと行っているのか分からないので試用期間の月給は10万円などと言う企業がありました。
言い換えると、こちらはリスクを負いたくないので、従業員にリスクの大半をを負わせます、ということになります。

だとしたら逆に給与面は高くないといけないでしょう。
ハイリスクハイリターンなら勤めたがる人はいるかもしれませんが、ハイリスクローリターンの企業に喜んで勤める人はいませんし、モチベーションだって上がりません。
また、そんな状態で事業が成功すると考えるのは無理があるでしょう。

経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われますが、他と比較して「ヒト」が非常に軽んじられているように感じます。
特に従業員が少ないほど、個々の従業員への依存度が高かったり、属人化しています(それが良いかどうかは別の話になりますが)。

だからこそヒトは重要です。
モノ、カネ、情報を活用するのはヒトなので、ヒトの活用で他の3つの経営資源が増加、向上していくサイクルが順当に回り、ヒトを軽んじていると順当に経営資源を活用するサイクルが循環しないのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

経営におけるデザインの重要性(後編)

前回の続きです。

経営におけるデザインの重要性(後編)

実際のところ、デザインとはマーケティングミックスの4Pの内のプロモーションの一部程度に思われているのではないでしょうか。
個人的に、デザインは経営資源であると考えています。
視覚に訴求するものには全てデザインが施され、その活用如何で訴求力が変わるからです。

本来はデザイナーが啓蒙すべきこと

さて、経営におけるデザインの重要性は、本来、デザイナーが啓蒙・啓発すべきことだと考えていますが、なかなか社会全体に広まらないのはいくつか原因があります。

原因1:制作サイドの認識

そもそもデザイナー、制作会社などの制作サイドが、経営におけるデザインの重要性を認識していないとどうにもなりません。
実際のところ、そういった認識で制作している企業やデザイナーがどれだけいるのかは分かりませんが。

原因2:広告代理店など中間業者の認識

仮に制作会社が認識していなくても、広告代理店などの中間業者がちゃんと認識していればそのように指示・依頼できます。
しかし、中間業者にそういった認識がない場合は、制作サイドの意思や意図が中間業者でストップしてしまうことになるでしょう。

原因3:依頼側の認識

依頼企業側の誰が窓口担当であるかによっても、経営におけるデザインの重要性の伝わり方が変わります。
経営のトップに近い人が窓口担当になれば、制作側(制作会社、あるいは中間業者)は経営におけるデザインの重要性を比較的伝えやすくなります。
しかし、ある程度の規模の会社で、担当者がトップマネジメントから階層が離れるほど、重要性を伝えることが難しくなります。
担当者が経営を意識できなかったり、担当者が認識できても経営におけるデザインの重要性が経営のトップ層まで伝わりにくいからです。
そもそも、従業員に経営理念が浸透していないケースもありますね。
以上のように、依頼側と制作側のいずれかに認識不足の人がいる場合、チグハグなものができあがってしまうことになるでしょう。

実際、大企業でも経営レベルでデザインを適切に活用できている企業の方が少ないと感じています。
担当者が自分の好みでデザインの判断を行っていたり、こちらは客だから言うことを聞けといったことは、企業規模の大小は関係ないからです。

解決策

「経験や知識が無い方でもここだけ見ればOKです」と言えるようなポイントはありません。
当然ながら、デザインの良し悪しを判断するには、それなりの経験や知識が必要です。

しかし、意識するとしないとでは結果は大きく変わるでしょう。
具体的には、企業理念やフィロソフィー、ドメインなどをもう一度確認したうえで、従業員間(少なくともデザインの可否の判断をする人)で徹底してください。
そして、それに基づいてデザインを判断するように指示してください。

制作依頼時には、まず経営理念や事業ドメイン(誰に、何を、どのように)をしっかり説明します。
その後、デザインを提出してもらう際に、説明をどう汲み取ったのか、デザインのコンセプトを口頭でもコンセプトシートでも結構です、デザインの提示よりも先に説明してもらうようにしましょう。
もちろん、その説明が見当違いでしたらどんなデザインでも無意味なものです。見るまでもなくボツになります(せっかくですので見たいでしょうし、好みのデザインだからといって、それでOKを出さなければ見るのはもちろんOKです)。

その上で、コンセプトにどう沿っているのかの説明を聞きながらデザインを確認すれば、説明とデザインが合致しているかどうかの判断材料をもちながら確認ができるはずです。

これらは依頼側だけでなく、制作側にもメリットがあります。
依頼している本人にさえよく分かっていない「好み」というものに合致するように何度も作り直しながら手探りで制作しなくてよくなります。
さらに、論理的に判断してもらえるなら、制作サイドは明確な基準をもって制作することができるので、仕事がしやすくなります。

その結果、好みを手探りしながら作るよりも制作期間が短くなること、基準が明確なので制作物のクオリティも高まります。
さらに、コンセプトを汲み取った上で別のアプローチの提案などもしてもらいやすくなるという、依頼側にとっての新たなメリットも発生します。

最後に

デザインを経営レベルで判断し、活用するという意識をもった企業は、大企業にも少なく、中小企業ではほとんど存在しないでしょう。
そのためデザインをうまく活用できるようになることで、企業は大きな武器を手に入れることになりえます。
今まで気にされたことがなかったかもしれませんが、少しでもデザインを活用していただけたらと思います。

経営におけるデザインの重要性(前編)

経営におけるデザインの重要性

以前、デザインとは意匠のことだけではない旨書きましたが、今回は意匠という意味でデザインという単語を使用しています。

経営理念を額に入れて掲示しているイメージが2点ありますので、それぞれを見比べてください。
内容は適当に考えたものですが、フォント以外は両方ともまったく同じです。

経営におけるデザインの重要性の例01

いかがでしょうか、左側の行書体で書かれた方がちゃんとしてそうに見えないでしょうか?
従業員が、あるいは来訪者が右側のものを見たとして、どういった印象を受けるでしょうか?

フォントが変わるだけで見た人に与える印象が変わることがお分かりいただけたと思います。

本来、企業にとってデザインとは重要な要素です。
会社案内、名刺、Webサイト、ユニフォーム、店舗などの看板や外装・内装など、事業をするうえで視覚に訴える物をかならず使用します。
そして、視覚に訴えるものには大なり小なりデザインが施されています。
仮に、デザインの素人がなんとなくで文字を配置しただけのショボい名刺にしても、「なんとなくで文字を配置したショボい」デザインなのです。

さて、上の例では理念そのものとデザイン(フォント)はマッチしてますでしょうか?

理念とデザインのマッチ

理念とデザインのマッチという点をもう少し掘り下げてみたいと思います。

例えば、経営理念が「顧客のために他社の3倍のスピードで仕事をします」という企業があったとします。
その企業の社名が「株式会社静寂」だったらどうでしょう?
「静寂」という社名から来るイメージが経営理念とマッチしていませんよね。

仮に「株式会社Threefold」として、これが理念とマッチした企業名だとしましょう。
以下に企業のロゴのサンプルを3点並べてみましたが、この中ならどれが他社の3倍のスピードで仕事しそうに感じるでしょうか?

経営におけるデザインの重要性の例02

社内外の方の視覚に訴えるものは、経営理念にマッチしていないと、訴えていることと見た目から来るイメージとの間にギャップを感じてしまい、企業としての信頼感に悪い影響を与えかねません。

一貫したコンセプト

経営理念というものは、ロゴやCIに現れるだけのものではありません。
「早くて、安くて、そこそこ美味しい」という経営理念の飲食店と、「最高級の料理を最高級のおもてなしで」という経営理念の飲食店では、料理とその値段、スタッフのサービス、外装、内装全て違うはずです。
企業としての戦略、製品やサービス、従業員の意識や行動などが企業としてのブランドを作っていくものなのですが、デザインが持つ役割がブランド構築に大きな影響を与えることもあります。

例えば、Appleという企業にどのようなイメージをお持ちですか。
Mac Book AirやiPhone、Apple Watchなど、洗練されたかっこいいデザインの製品を作るイメージを持たれている方が多いでしょうか。
特にiPhone、iPad、iPod(iPod touch)など、製品のデザインが似ていますが、Appleは全ての製品において一貫したコンセプトの元にデザインされていると見受けられます。
デザイン自体は流行り廃りがありますので、製品のデザインそのものは時代に応じて変わってきていますが、根底にあるものはおそらく変わっていないでしょう。
製品だけでなく、WebサイトやApple Storeや量販店内のApple専用の売り場もシンプルで、洗練されているイメージで貫徹されています。

Appleが一貫したコンセプトを基にして製品やWebサイト、店舗などをデザインすることで、強力なブランドイメージを確立・訴求したということはお分かりいただけたかと思います。

しかしながら、それはAppleだからできたことでしょうか?Appleでないとできないことでしょうか?
決してそんなことはないと思います。

それは、そもそも経営理念というものがない、経営理念が従業員に浸透していない、経営理念に基づいた行動ができていない。
そして、視覚を通じて訴求するためのデザインの判断を、経営理念に基づくという意識をもっていないからではないでしょうか。

続きます。

デザインによる差別化

デザインによる差別化

強豪との差別化ができていないと、消費者から見て横並び状態になってしまい、選んでもらうのが難しくなります。
差別化といっても機能的価値での差別化と情緒的価値な価値での差別化がありますが、成熟産業になると、どうしても機能的価値での差別化が難しいのが現状でしょう。

りそな銀行がサービス拡大で差別化を図ろうとしています。

りそなが時間外サービスを拡大、24時間決済や無休店舗、銀行界に波紋

これは機能的価値での差別化ですね。
銀行はサービスが横並びで、どこもそこから出ようとしない稀有な業界ですから、成熟産業であっても差別化を図りやすいのでしょう。
むしろ、サービス拡大の余地があるということで、成熟していない産業なのかもしれません。
その差別化が結果として売上に結びつかなければ意味がありませんが、

  • ユーザーが機能やスペックの向上を望んでおらず、それらの向上が訴求に結びつかない。
  • 機能を高めてもそれ自体で差別化が難しい。
  • 技術がコモディティ化していて、すぐに他社に追いつかれる

他にもあるでしょうが、これらの場合は情緒的価値での差別化を図るケースになるでしょう。

情緒的価値での差別化も色々パターンがありますが、商品そのものをデザインなどで差別化する方法があります。
BtoBの商品よりも、BtoCの商品の方が取り入れやすいのでしょうか、以下にデザインを活用している中小企業をご紹介しますが、全てBtoC(あるいは最終消費者が個人)の商品です。

以下の本からのご紹介です。
その他、様々な事例が紹介されていますので、ご興味を持たれた方はご覧ください。

商品のデザインによる高付加価値化は中小企業基盤整備機構もかねてより提言していていますが、こういった視点の支援を受けようと考えている企業はまだまだ少ないと個人的に感じています。
差別化の難しいBtoC商品を製造している企業は積極的に取り入れても良いのではないでしょうか。

参考:中小企業基盤整備機構サイト内「デザイン活用支援・ガイドブック」
※デザイン活用と言ってますが、資料のpdfのデザインはいかにも素人が作りましたという感じでイケてません。

できるかできないか

できるかできないか

突然ではありますが、特許権の存続期間は特許出願の日から20年です。
ですが、医薬品や農薬は、存続期間の延長登録のあったものは最長5年の延長が可能です。

第六十七条  特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

第六十七条の二  特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

以上を踏まえて「特許権は延長が可能か否か」と問われたらどう答えますか?
以下の2パターンが考えられるでしょう。

  1. 可能。医薬品や農薬は延長できるため。
  2. 不可能。ただし、医薬品や農薬という例外有り。

日本語的にはどちらも間違っていません。
原則に目を向けるか、例外の条件に目を向けるかの違いです。

さて、ビジネスの場合だと相手の要求に対して「可能です。ただし○○をご用意下さい」のように、可能であることを伝えて、そのための条件を後で提示する場合と、「不可能です。ですが、○○を用意いただけたら可能になります」のように、現在の条件では不可能であることを伝えて、可能になる条件を後から提示する2種類の返答の仕方があります。

私の場合ですがデータなどをいただかないとできない追加作業が発生しそうな場合、「データを頂けたら作ります」みたいな条件付きOKは出さないと決めています。
依頼側は深く考えずに言って来てたりするので、条件付きOKを出すと、相手が勝手に「OK」だと思ってトラブルになったというケースがあるからです。

広告代理店からの仕事だったのですが、データをいただけないとその仕事は進みませんので、データを手配していただけるものだと思っていました。
にもかかわらず、相手はこちらが仕事を進めていると思っていて、勝手にクライアントと約束だけ取り交わしていました。
制作会社やデザイナーの方だと、こういったトラブルは経験しているでしょう。

作業が新たに発生すると、その分費用が発生します。
その分を追加で頂ければ良いのですが、そうでないなら持ち出しで作業をする羽目になっていまいます。

「条件付きでOK=条件が満たされない限りNG」な訳ですから、まず「できない」と断ります。
その上で、条件を伝えた上で契約を結びなおす、というような身の守り方をしないと損をするだけになってしまいます。
それに文句を言ったり、ゴネるようならそういったクライアントとは付き合わない方が良いでしょう。

フリーランスのデザイナーさんなんかだと、クライアントや広告代理店よりも規模が小さいため、侮られてなのかは分かりませんが、いい加減な対応でダラダラと引き伸ばされてしまうなんてことがあります。
損をしないように、特にご注意ください。

採用と育成

どんな企業でも経営資源は有限です。
特にヒトの問題が存在しない企業はないでしょう。
では、採用・育成のノウハウをちゃんと確立していると言える企業がどれだけあるでしょうか。

採用にあたって、中途採用なら職務経歴から能力などを多少は判断できるかもしれません。
しかし、新卒採用や未経験採用の場合はポテンシャルで採用することになります。
そして、スキルや実績で評価をします。

ヒトの育成

ポテンシャルで採用して、スキル・実績で評価するってチームで行うプロスポーツと同じじゃないですか?

例えばJリーグの場合、クラブの方針がそれぞれあって、それに合わせた選手をユース年代からトップに昇格させる、あるいは高校、大学、社会人などの外の選手と契約します。
その時点である程度のスキルなどは身につけている訳ですが、プロとして育成を行います。

育成をするにあたっても、クラブの方針に合わせて監督やコーチを招聘します。
ずっとコーチとしてクラブと契約している方もおられますが、外国人監督の場合は監督が信頼できる人間をコーチとして一緒に連れてくることが多いです。

クラブの話からは外れますが、練習だけでなく、本番(試合)でしか身につかないことも多いというのは指導者も同じだそうです。
そのため、アジアの国々に日本人監督を派遣して指導したりしています。
つまり、JFAとしては選手だけでなく、日本人指導者も育成している訳です。

話を企業の人材育成に戻しますが、従業員を採用し、育成し、活躍していただくためのノウハウを持っている企業はどれぐらいあるのでしょうか。
大企業だと人事専門のセクションがあって、自社にあった面接や育成のノウハウも確立しているかもしれません。

ですが、中小企業だと、社長が面接して、その時の感覚で採否を決めている。
OJTと言えば聞こえはいいですが、要するに現場任せ。
指導担当者の育成なんて思いもしなかった。
なんていう感じではないでしょうか。

これはマンパワーの有無や時間を割けるかどうかという話よりも、そもそも意識が違うのではないかと思っています。
それらが事業を行うための組織を構築している大企業(そういった組織を構築できないと大企業になれないでしょうが)と、毎日の仕事をやっている中小企業という違いになって表れているのではないでしょうか。
もちろん、全ての企業が大企業を目指せという話ではなく、ヒトという経営資源を採用し、育成し、評価するにあたってどういう考えのもとに何を行い、行わないのかということです。

採用のノウハウが無ければ、能力のある人を採用できません。
育成のノウハウがなければ、能力を高めることができません。
育成する担当者が未熟だったら、やっぱり育成対象の能力を高めることができません。

当たり前の話ですが、当たり前のことができていないから問題が発生するのでしょう。

中小企業の場合は、大企業より属人的で、1人1人の従業員のスキルの影響を受けやすいにも関わらず、採用・育成・評価に関して考えが追い付いていないのではないか。
その点を改善したら、企業はより成長できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

指針

指針

2015年6月26日発行の日経MJに掲載されていた、広島県にある飲食店の記事を紹介いたします。

おか半の総本店は125坪(413平方メートル)で150席あり、月商1,820万円を売り上げるとのことです。
以下、引用です。

以前は20~30坪のすし店などをいくつか展開していたが、半年から1年で辞めてしまうスタッフが多かった。給与の額など様々な不満が辞めるきっかけになっていたが、突き詰めると人間関係が問題で店を去っていた。

辞めるきっかけとして給与の額が挙げられていますが、給与額を上げるだけで問題解決ができると考えていたら、人件費が増えただけで、止める人間は減らないという結果になっていたでしょう。

岡崎社長は中小企業経営者の勉強会などに参加し、どうしたらスタッフを定着させられるかを学んだ。その結果、社員に経営理念を理解してもらえば、互いの気持ちがよく分かるようになり、安心して働いてもらえると気づいた。
(略)
今も年に1度は社員やパートの全員、約70人を町の施設などに集めて経営計画の発表会を実施し、経営指標や社長の思いを細かく伝えている。

「経営理念を理解する=互いの気持ちがよく分かる」という点は文章の論理が飛躍していて、なぜそうなるのかがよく分からないものの、経営理念を従業員に理解してもらうことが大切であることは記事通りだと思います。

複数の人間が集まって何かをしようとするとき、それぞれが別々の方向を向いていては上手くいかない、なんてことは誰もが頭では分かっていることだと思います。
ですが、実際に企業を経営する中で、従業員が同じ方向を向いているかということを意識しているか?従業員が同じ方向を向くように何かやっているかとなると、どうでしょうか?
そして、それは方向を指し示すべき経営者のせいだという意識があるでしょうか。

企業にせよ個人事業主にせよ、経営理念がないのであれば一度考えてみるのも良いと思います。
ですが、経営理念は企業の戦略における意思決定から、商品やサービス、従業員の行動規範にまで影響を与えるものですから、ネットで検索して適当に良さ気な感じに作ってみたというような経営理念では意味がありません。

実際に社労士の先生に何か言われたらしくて、「どこから借りてきたのか?」というような経営理念を突如掲げた会社を知っていますが、それでは意味がありません。
それぞれのセクション(というほど従業員はいませんが)がバラバラで新入社員が入社1週間で「この会社はおかしい」と言いだす会社でした。
私がかつて勤めていた会社ですけど。

犯人探し

中小企業診断士の2次試験を受験される方のサポートさせていただいているのですが、なかなか結果が出せない方の特徴の一つとして、ダブルループ学習ができないということを感じています。

結果が出ないということは、今までやってきたことの一部、あるいは全部が合格するためには不十分、不適当な訳です。
ですが、勉強の仕方や問題の捉え方、文章の見方などを変えないで、問題を解くときに考えるプロセスが未熟であると考えられがちだと感じています。
おそらく、解決しにくいものや、変更しづらいものを無意識に避けて、解決しやすい(しやすそうな)もの、変更が容易なものを犯人にしたがるという心理が働いているのではないでしょうか。

犯人捜し

経営においても同様のことが起こっていると考えられます。

私が経験した例ですが、ある引越会社のWebサイトからの申し込み件数が減っていたそうです。
申し込み件数を分解すると、以下のようになります。

申し込み件数=ユーザー数×申し込み率

実際のところ、ユニークユーザーが減少し、申し込み率は微増だったそうです。
それをサイトの一部である申し込み部分のデザインを変更してどうにかならないかという話でした。

もちろんこれは言うまでもなく、ユニークユーザーの減少が原因です。
一見、〇〇が原因であると思うけれども、実は××が真因でした、という例では全くありません。

申し込み部分のデザインを変えたところで申し込み率が劇的に増加することは考えにくく、ちょっと見た目が変わった以上の効果はないでしょう。
このデザイン変更の依頼を聞いたときに、クライアントの担当者や代理店の担当者は大丈夫か?と本気で思いました。

何かを変更するということは、その範囲が大きい程、その程度が大きいほど、今までの期間が長い程、大変になると思います。
ですから、大変じゃない変化、つまり変えやすいところを変えただけというのは、全体から見ると影響が出るほど変わっていないんだと思います。

経営環境が変化してクリアすべき大きな壁に突き当たった時、それを避け、あるいは目をつぶり、犯人にしやすいものを犯人にする。
その結果、何も解決できずに業績が悪化するというのは、経営における悪いパターンの一つだと思われますが、いかがでしょうか。

面接

企業や事業者が人材を新規採用するにあたって、面接を行います。
それで求職者の良し悪しを判断する材料にするわけですが、同様に求職者も企業を見ています。

デザイナーという職業は腕で食べているということと、経営が脆弱な企業が多いということから、他業種よりも転職回数が多いと思われます。
私も例にもれず何回か転職をしているのですが、1回の転職時に数十社面接を受けて、何社か内定を頂いた中で選択するという方法でやってきました。
正確な数は分からないものの、面接を受けた回数は100数十社は下らないでしょう。
そうなると、面接の際に「ああ、この会社はあかんな…」と分かるようになってきます。

いくつか例をご紹介します。

[case:1]

大手が先行しているサービスを後追いで始めたいといったものがありました。
具体的にいうと不動産検索のHOME’Sみたいなことがやりたいとのことでした。
さすがに全く同じではなく、若干異なる点もあると言っていた記憶はありますが、どう違うのかははっきり覚えていません。
経営者の方の目標や想いだけが先行していて、その差別点に対して、不動産業者側と不動産や部屋を探すエンドユーザーにとって、HOME’Sではなく、それを利用するメリットがどれだけあるのだろうか、みたいに感じたことは記憶しています。
また、イニシャルコストがどれだけかかるのかという点も全く分からないようでしたし、デザイナーがいたら同じようなシステムが作れると安易に考えているようでした。

ちなみに、そのサービスを実際に行ったかどうかは知りません。

[case:2]

確か地下鉄谷町線沿線にあった会社だと記憶していますが、「地下鉄は終電が早い…云々」と地下鉄で通勤するのが都合が悪いかのように言われたことがあります。
なんでも「お客様を感動させる」ために、あるスタッフは毎日終電で帰り、早朝に出勤するのだそうで、要するに「お客様を感動させる」ために長い拘束時間を要求される訳です。
従業員にそれだけの負担を強くというのは、従業員が無理をしないとやっていけないということで、すぐに破綻するなと感じました。
ですから、「お客様を感動させる」と熱っぽく何度もおっしゃってましたが、何をもって「お客様を感動させる」なのか聞く気にもなりませんでした。

社名すら覚えていないので、その後どうなったかは分かりませんが、普通に考えて数年待たずに倒産していると思います。

[case:3]

何も聞いてこない会社がありました。
こちらも質問したいことは色々とある訳ですが、企業も応募者に対してどういった経験・スキル、人間性なのか等を知るために面接をするんだと思います。しかし、その会社の面接官は何も聞いてきません。
質問の内容や受け答えに対する反応を見るというのはあるでしょうが、向こうからの質問は「他に質問はないですか?」しかありませんでした。

面接官が複数いて、メインでしゃべっている方以外は何も聞いてこないばかりか、メインで面接している方から何か質問はないかと話を振られたときに「別にありません」と答えるというのはよくあります。
雰囲気的に聞くことがないというよりも、何を聞けばいいのか考えていないとか、分かってないように感じました。

面接される側から見て印象は悪いと感じる人はいても、良いと感じる人はいないでしょうね。

他にも色々な例はあるのですが、キリがないのでこれぐらいにしておきます。

さて、中小企業が良い人材を確保できない…なんて話をよく聞きますが、理由の一つに面接がまずいというのもあるのではないかと感じています。
大企業と比べて…とか、会社の魅力を訴求できない…などの前に、そもそもこの社長と一緒に、あるいはこの人と一緒に仕事したくないなと思われるような面接をやっていないか、利害関係のない方に客観的に見ていただくというのはいかがでしょうか。

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