経営におけるデザインの重要性(前編)

経営におけるデザインの重要性

以前、デザインとは意匠のことだけではない旨書きましたが、今回は意匠という意味でデザインという単語を使用しています。

経営理念を額に入れて掲示しているイメージが2点ありますので、それぞれを見比べてください。
内容は適当に考えたものですが、フォント以外は両方ともまったく同じです。

経営におけるデザインの重要性の例01

いかがでしょうか、左側の行書体で書かれた方がちゃんとしてそうに見えないでしょうか?
従業員が、あるいは来訪者が右側のものを見たとして、どういった印象を受けるでしょうか?

フォントが変わるだけで見た人に与える印象が変わることがお分かりいただけたと思います。

本来、企業にとってデザインとは重要な要素です。
会社案内、名刺、Webサイト、ユニフォーム、店舗などの看板や外装・内装など、事業をするうえで視覚に訴える物をかならず使用します。
そして、視覚に訴えるものには大なり小なりデザインが施されています。
仮に、デザインの素人がなんとなくで文字を配置しただけのショボい名刺にしても、「なんとなくで文字を配置したショボい」デザインなのです。

さて、上の例では理念そのものとデザイン(フォント)はマッチしてますでしょうか?

理念とデザインのマッチ

理念とデザインのマッチという点をもう少し掘り下げてみたいと思います。

例えば、経営理念が「顧客のために他社の3倍のスピードで仕事をします」という企業があったとします。
その企業の社名が「株式会社静寂」だったらどうでしょう?
「静寂」という社名から来るイメージが経営理念とマッチしていませんよね。

仮に「株式会社Threefold」として、これが理念とマッチした企業名だとしましょう。
以下に企業のロゴのサンプルを3点並べてみましたが、この中ならどれが他社の3倍のスピードで仕事しそうに感じるでしょうか?

経営におけるデザインの重要性の例02

社内外の方の視覚に訴えるものは、経営理念にマッチしていないと、訴えていることと見た目から来るイメージとの間にギャップを感じてしまい、企業としての信頼感に悪い影響を与えかねません。

一貫したコンセプト

経営理念というものは、ロゴやCIに現れるだけのものではありません。
「早くて、安くて、そこそこ美味しい」という経営理念の飲食店と、「最高級の料理を最高級のおもてなしで」という経営理念の飲食店では、料理とその値段、スタッフのサービス、外装、内装全て違うはずです。
企業としての戦略、製品やサービス、従業員の意識や行動などが企業としてのブランドを作っていくものなのですが、デザインが持つ役割がブランド構築に大きな影響を与えることもあります。

例えば、Appleという企業にどのようなイメージをお持ちですか。
Mac Book AirやiPhone、Apple Watchなど、洗練されたかっこいいデザインの製品を作るイメージを持たれている方が多いでしょうか。
特にiPhone、iPad、iPod(iPod touch)など、製品のデザインが似ていますが、Appleは全ての製品において一貫したコンセプトの元にデザインされていると見受けられます。
デザイン自体は流行り廃りがありますので、製品のデザインそのものは時代に応じて変わってきていますが、根底にあるものはおそらく変わっていないでしょう。
製品だけでなく、WebサイトやApple Storeや量販店内のApple専用の売り場もシンプルで、洗練されているイメージで貫徹されています。

Appleが一貫したコンセプトを基にして製品やWebサイト、店舗などをデザインすることで、強力なブランドイメージを確立・訴求したということはお分かりいただけたかと思います。

しかしながら、それはAppleだからできたことでしょうか?Appleでないとできないことでしょうか?
決してそんなことはないと思います。

それは、そもそも経営理念というものがない、経営理念が従業員に浸透していない、経営理念に基づいた行動ができていない。
そして、視覚を通じて訴求するためのデザインの判断を、経営理念に基づくという意識をもっていないからではないでしょうか。

続きます。

デザインによる差別化

デザインによる差別化

強豪との差別化ができていないと、消費者から見て横並び状態になってしまい、選んでもらうのが難しくなります。
差別化といっても機能的価値での差別化と情緒的価値な価値での差別化がありますが、成熟産業になると、どうしても機能的価値での差別化が難しいのが現状でしょう。

りそな銀行がサービス拡大で差別化を図ろうとしています。

りそなが時間外サービスを拡大、24時間決済や無休店舗、銀行界に波紋

これは機能的価値での差別化ですね。
銀行はサービスが横並びで、どこもそこから出ようとしない稀有な業界ですから、成熟産業であっても差別化を図りやすいのでしょう。
むしろ、サービス拡大の余地があるということで、成熟していない産業なのかもしれません。
その差別化が結果として売上に結びつかなければ意味がありませんが、

  • ユーザーが機能やスペックの向上を望んでおらず、それらの向上が訴求に結びつかない。
  • 機能を高めてもそれ自体で差別化が難しい。
  • 技術がコモディティ化していて、すぐに他社に追いつかれる

他にもあるでしょうが、これらの場合は情緒的価値での差別化を図るケースになるでしょう。

情緒的価値での差別化も色々パターンがありますが、商品そのものをデザインなどで差別化する方法があります。
BtoBの商品よりも、BtoCの商品の方が取り入れやすいのでしょうか、以下にデザインを活用している中小企業をご紹介しますが、全てBtoC(あるいは最終消費者が個人)の商品です。

以下の本からのご紹介です。
その他、様々な事例が紹介されていますので、ご興味を持たれた方はご覧ください。

商品のデザインによる高付加価値化は中小企業基盤整備機構もかねてより提言していていますが、こういった視点の支援を受けようと考えている企業はまだまだ少ないと個人的に感じています。
差別化の難しいBtoC商品を製造している企業は積極的に取り入れても良いのではないでしょうか。

参考:中小企業基盤整備機構サイト内「デザイン活用支援・ガイドブック」
※デザイン活用と言ってますが、資料のpdfのデザインはいかにも素人が作りましたという感じでイケてません。

できるかできないか

できるかできないか

突然ではありますが、特許権の存続期間は特許出願の日から20年です。
ですが、医薬品や農薬は、存続期間の延長登録のあったものは最長5年の延長が可能です。

第六十七条  特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

第六十七条の二  特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

以上を踏まえて「特許権は延長が可能か否か」と問われたらどう答えますか?
以下の2パターンが考えられるでしょう。

  1. 可能。医薬品や農薬は延長できるため。
  2. 不可能。ただし、医薬品や農薬という例外有り。

日本語的にはどちらも間違っていません。
原則に目を向けるか、例外の条件に目を向けるかの違いです。

さて、ビジネスの場合だと相手の要求に対して「可能です。ただし○○をご用意下さい」のように、可能であることを伝えて、そのための条件を後で提示する場合と、「不可能です。ですが、○○を用意いただけたら可能になります」のように、現在の条件では不可能であることを伝えて、可能になる条件を後から提示する2種類の返答の仕方があります。

私の場合ですがデータなどをいただかないとできない追加作業が発生しそうな場合、「データを頂けたら作ります」みたいな条件付きOKは出さないと決めています。
依頼側は深く考えずに言って来てたりするので、条件付きOKを出すと、相手が勝手に「OK」だと思ってトラブルになったというケースがあるからです。

広告代理店からの仕事だったのですが、データをいただけないとその仕事は進みませんので、データを手配していただけるものだと思っていました。
にもかかわらず、相手はこちらが仕事を進めていると思っていて、勝手にクライアントと約束だけ取り交わしていました。
制作会社やデザイナーの方だと、こういったトラブルは経験しているでしょう。

作業が新たに発生すると、その分費用が発生します。
その分を追加で頂ければ良いのですが、そうでないなら持ち出しで作業をする羽目になっていまいます。

「条件付きでOK=条件が満たされない限りNG」な訳ですから、まず「できない」と断ります。
その上で、条件を伝えた上で契約を結びなおす、というような身の守り方をしないと損をするだけになってしまいます。
それに文句を言ったり、ゴネるようならそういったクライアントとは付き合わない方が良いでしょう。

フリーランスのデザイナーさんなんかだと、クライアントや広告代理店よりも規模が小さいため、侮られてなのかは分かりませんが、いい加減な対応でダラダラと引き伸ばされてしまうなんてことがあります。
損をしないように、特にご注意ください。

採用と育成

どんな企業でも経営資源は有限です。
特にヒトの問題が存在しない企業はないでしょう。
では、採用・育成のノウハウをちゃんと確立していると言える企業がどれだけあるでしょうか。

採用にあたって、中途採用なら職務経歴から能力などを多少は判断できるかもしれません。
しかし、新卒採用や未経験採用の場合はポテンシャルで採用することになります。
そして、スキルや実績で評価をします。

ヒトの育成

ポテンシャルで採用して、スキル・実績で評価するってチームで行うプロスポーツと同じじゃないですか?

例えばJリーグの場合、クラブの方針がそれぞれあって、それに合わせた選手をユース年代からトップに昇格させる、あるいは高校、大学、社会人などの外の選手と契約します。
その時点である程度のスキルなどは身につけている訳ですが、プロとして育成を行います。

育成をするにあたっても、クラブの方針に合わせて監督やコーチを招聘します。
ずっとコーチとしてクラブと契約している方もおられますが、外国人監督の場合は監督が信頼できる人間をコーチとして一緒に連れてくることが多いです。

クラブの話からは外れますが、練習だけでなく、本番(試合)でしか身につかないことも多いというのは指導者も同じだそうです。
そのため、アジアの国々に日本人監督を派遣して指導したりしています。
つまり、JFAとしては選手だけでなく、日本人指導者も育成している訳です。

話を企業の人材育成に戻しますが、従業員を採用し、育成し、活躍していただくためのノウハウを持っている企業はどれぐらいあるのでしょうか。
大企業だと人事専門のセクションがあって、自社にあった面接や育成のノウハウも確立しているかもしれません。

ですが、中小企業だと、社長が面接して、その時の感覚で採否を決めている。
OJTと言えば聞こえはいいですが、要するに現場任せ。
指導担当者の育成なんて思いもしなかった。
なんていう感じではないでしょうか。

これはマンパワーの有無や時間を割けるかどうかという話よりも、そもそも意識が違うのではないかと思っています。
それらが事業を行うための組織を構築している大企業(そういった組織を構築できないと大企業になれないでしょうが)と、毎日の仕事をやっている中小企業という違いになって表れているのではないでしょうか。
もちろん、全ての企業が大企業を目指せという話ではなく、ヒトという経営資源を採用し、育成し、評価するにあたってどういう考えのもとに何を行い、行わないのかということです。

採用のノウハウが無ければ、能力のある人を採用できません。
育成のノウハウがなければ、能力を高めることができません。
育成する担当者が未熟だったら、やっぱり育成対象の能力を高めることができません。

当たり前の話ですが、当たり前のことができていないから問題が発生するのでしょう。

中小企業の場合は、大企業より属人的で、1人1人の従業員のスキルの影響を受けやすいにも関わらず、採用・育成・評価に関して考えが追い付いていないのではないか。
その点を改善したら、企業はより成長できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

指針

指針

2015年6月26日発行の日経MJに掲載されていた、広島県にある飲食店の記事を紹介いたします。

おか半の総本店は125坪(413平方メートル)で150席あり、月商1,820万円を売り上げるとのことです。
以下、引用です。

以前は20~30坪のすし店などをいくつか展開していたが、半年から1年で辞めてしまうスタッフが多かった。給与の額など様々な不満が辞めるきっかけになっていたが、突き詰めると人間関係が問題で店を去っていた。

辞めるきっかけとして給与の額が挙げられていますが、給与額を上げるだけで問題解決ができると考えていたら、人件費が増えただけで、止める人間は減らないという結果になっていたでしょう。

岡崎社長は中小企業経営者の勉強会などに参加し、どうしたらスタッフを定着させられるかを学んだ。その結果、社員に経営理念を理解してもらえば、互いの気持ちがよく分かるようになり、安心して働いてもらえると気づいた。
(略)
今も年に1度は社員やパートの全員、約70人を町の施設などに集めて経営計画の発表会を実施し、経営指標や社長の思いを細かく伝えている。

「経営理念を理解する=互いの気持ちがよく分かる」という点は文章の論理が飛躍していて、なぜそうなるのかがよく分からないものの、経営理念を従業員に理解してもらうことが大切であることは記事通りだと思います。

複数の人間が集まって何かをしようとするとき、それぞれが別々の方向を向いていては上手くいかない、なんてことは誰もが頭では分かっていることだと思います。
ですが、実際に企業を経営する中で、従業員が同じ方向を向いているかということを意識しているか?従業員が同じ方向を向くように何かやっているかとなると、どうでしょうか?
そして、それは方向を指し示すべき経営者のせいだという意識があるでしょうか。

企業にせよ個人事業主にせよ、経営理念がないのであれば一度考えてみるのも良いと思います。
ですが、経営理念は企業の戦略における意思決定から、商品やサービス、従業員の行動規範にまで影響を与えるものですから、ネットで検索して適当に良さ気な感じに作ってみたというような経営理念では意味がありません。

実際に社労士の先生に何か言われたらしくて、「どこから借りてきたのか?」というような経営理念を突如掲げた会社を知っていますが、それでは意味がありません。
それぞれのセクション(というほど従業員はいませんが)がバラバラで新入社員が入社1週間で「この会社はおかしい」と言いだす会社でした。
私がかつて勤めていた会社ですけど。

犯人探し

中小企業診断士の2次試験を受験される方のサポートさせていただいているのですが、なかなか結果が出せない方の特徴の一つとして、ダブルループ学習ができないということを感じています。

結果が出ないということは、今までやってきたことの一部、あるいは全部が合格するためには不十分、不適当な訳です。
ですが、勉強の仕方や問題の捉え方、文章の見方などを変えないで、問題を解くときに考えるプロセスが未熟であると考えられがちだと感じています。
おそらく、解決しにくいものや、変更しづらいものを無意識に避けて、解決しやすい(しやすそうな)もの、変更が容易なものを犯人にしたがるという心理が働いているのではないでしょうか。

犯人捜し

経営においても同様のことが起こっていると考えられます。

私が経験した例ですが、ある引越会社のWebサイトからの申し込み件数が減っていたそうです。
申し込み件数を分解すると、以下のようになります。

申し込み件数=ユーザー数×申し込み率

実際のところ、ユニークユーザーが減少し、申し込み率は微増だったそうです。
それをサイトの一部である申し込み部分のデザインを変更してどうにかならないかという話でした。

もちろんこれは言うまでもなく、ユニークユーザーの減少が原因です。
一見、〇〇が原因であると思うけれども、実は××が真因でした、という例では全くありません。

申し込み部分のデザインを変えたところで申し込み率が劇的に増加することは考えにくく、ちょっと見た目が変わった以上の効果はないでしょう。
このデザイン変更の依頼を聞いたときに、クライアントの担当者や代理店の担当者は大丈夫か?と本気で思いました。

何かを変更するということは、その範囲が大きい程、その程度が大きいほど、今までの期間が長い程、大変になると思います。
ですから、大変じゃない変化、つまり変えやすいところを変えただけというのは、全体から見ると影響が出るほど変わっていないんだと思います。

経営環境が変化してクリアすべき大きな壁に突き当たった時、それを避け、あるいは目をつぶり、犯人にしやすいものを犯人にする。
その結果、何も解決できずに業績が悪化するというのは、経営における悪いパターンの一つだと思われますが、いかがでしょうか。

面接

企業や事業者が人材を新規採用するにあたって、面接を行います。
それで求職者の良し悪しを判断する材料にするわけですが、同様に求職者も企業を見ています。

デザイナーという職業は腕で食べているということと、経営が脆弱な企業が多いということから、他業種よりも転職回数が多いと思われます。
私も例にもれず何回か転職をしているのですが、1回の転職時に数十社面接を受けて、何社か内定を頂いた中で選択するという方法でやってきました。
正確な数は分からないものの、面接を受けた回数は100数十社は下らないでしょう。
そうなると、面接の際に「ああ、この会社はあかんな…」と分かるようになってきます。

いくつか例をご紹介します。

[case:1]

大手が先行しているサービスを後追いで始めたいといったものがありました。
具体的にいうと不動産検索のHOME’Sみたいなことがやりたいとのことでした。
さすがに全く同じではなく、若干異なる点もあると言っていた記憶はありますが、どう違うのかははっきり覚えていません。
経営者の方の目標や想いだけが先行していて、その差別点に対して、不動産業者側と不動産や部屋を探すエンドユーザーにとって、HOME’Sではなく、それを利用するメリットがどれだけあるのだろうか、みたいに感じたことは記憶しています。
また、イニシャルコストがどれだけかかるのかという点も全く分からないようでしたし、デザイナーがいたら同じようなシステムが作れると安易に考えているようでした。

ちなみに、そのサービスを実際に行ったかどうかは知りません。

[case:2]

確か地下鉄谷町線沿線にあった会社だと記憶していますが、「地下鉄は終電が早い…云々」と地下鉄で通勤するのが都合が悪いかのように言われたことがあります。
なんでも「お客様を感動させる」ために、あるスタッフは毎日終電で帰り、早朝に出勤するのだそうで、要するに「お客様を感動させる」ために長い拘束時間を要求される訳です。
従業員にそれだけの負担を強くというのは、従業員が無理をしないとやっていけないということで、すぐに破綻するなと感じました。
ですから、「お客様を感動させる」と熱っぽく何度もおっしゃってましたが、何をもって「お客様を感動させる」なのか聞く気にもなりませんでした。

社名すら覚えていないので、その後どうなったかは分かりませんが、普通に考えて数年待たずに倒産していると思います。

[case:3]

何も聞いてこない会社がありました。
こちらも質問したいことは色々とある訳ですが、企業も応募者に対してどういった経験・スキル、人間性なのか等を知るために面接をするんだと思います。しかし、その会社の面接官は何も聞いてきません。
質問の内容や受け答えに対する反応を見るというのはあるでしょうが、向こうからの質問は「他に質問はないですか?」しかありませんでした。

面接官が複数いて、メインでしゃべっている方以外は何も聞いてこないばかりか、メインで面接している方から何か質問はないかと話を振られたときに「別にありません」と答えるというのはよくあります。
雰囲気的に聞くことがないというよりも、何を聞けばいいのか考えていないとか、分かってないように感じました。

面接される側から見て印象は悪いと感じる人はいても、良いと感じる人はいないでしょうね。

他にも色々な例はあるのですが、キリがないのでこれぐらいにしておきます。

さて、中小企業が良い人材を確保できない…なんて話をよく聞きますが、理由の一つに面接がまずいというのもあるのではないかと感じています。
大企業と比べて…とか、会社の魅力を訴求できない…などの前に、そもそもこの社長と一緒に、あるいはこの人と一緒に仕事したくないなと思われるような面接をやっていないか、利害関係のない方に客観的に見ていただくというのはいかがでしょうか。

スーツと常識

シングルループ学習とダブルループ学習について、中小企業診断士の試験を受けられた方は勉強されたはずです。
普段の生活においても、意識するしないは別として、その2つを使い分けていると思われます。

スーツと常識

ある企業の経営者の方とお話していた時のことです。
その企業は通常来客がありませんし、業務内容を考えるとスーツである必然性はありません。
ですが、その経営者の方は仕事をするときはスーツでなくてはいけないという考えでした。
それ自体は別に悪いわけではないのですが、業務内容や効率性を鑑みて選択した結果ではなく、「仕事はスーツが常識だから」そうおっしゃっていました。

常識だから。
慣例だから。
何となく。
考えずに決めたことは、通常省みられることがありません。

さて、現在の経営状態というのは、過去の選択の結果です。

こういう事業を始めよう。
ここに事業所を構えよう。
誰を採用しよう?
どう仕事を割り振ろう?
今行うべきタスクは?

大きなことから小さいことまで、過去に選択してきたことの積み重ね、そしてそれらの結果が現在の状態です。

いままで多くの選択してきた中で、どれだけ考えた末の選択だったでしょうか?
今まで当たり前だと思ってやっていることも、その選択に必然性はあるのか?論理的に正しいか?行わなかったらどうなる?他に選択肢はないのか?
全ての事象においてゼロベースで考えるのは難しいと思いますが、そうやって考えたものなら分析が可能ですので、つまづいた時だけでなく、成功した時も立ち返って原因や理由を特定し次以降に繋げる、といったことが可能になります。

ちなみに、社長の他に1人だけスタッフの女の子がいたのですが、「お客さんが来ようが来まいが、仕事ならスーツが当たり前」と社長がおっしゃるのを聞きながら、「この子は私服やけどなあ」と思っていました。
服装はどうでも良いのですが、自分の考えが徹底できていないという点は問題ですね。

クラウドソーシング

クラウドソーシング

クラウドソーシングというものをご存知でしょうか。
Web上でのビジネスマッチングですが、依頼主と受託側が会わなくても仕事ができて、物理的な制約がないという点は素晴らしい点だと思います。
ですが、私がフリーランスのデザイナーだとしても使用しないでしょう。
理由は、リスクに対して単価が話にならないぐらい安すぎるから。リスクがゼロでも安すぎるから。あと、やっぱり安すぎるからです。

依頼側が相場を分かっていないだけかも知れませんが、Webの制作に関して言えば相場の半値以下です。
それでも実績が欲しいから採算度外視で案件を受託したり、暇な人が小遣い稼ぎ程度の意識で受託する訳です。
その結果、ありえない料金の依頼ばかりになってしまっています。

運営側も料金の目安を提示したり、料金が妥当かどうかを利用者が意見できるようにするなど、非常識な案件を排除する努力をすべきでしょうが、現状を見る限りそういった努力をしているようには見えません。
案件の料金が低いために運営者が受け取るマージンも上がらない訳ですが、クラウドソーシングがいくつも存在するってことは、運営側は現状で儲かっているっていうことでしょうか?
だとしたら、改善されることは期待できないということですね。

料金を決めることはセンシティブで慎重に行うべきことです。
クラウドソーシングだからという訳ではありませんが、アイデアだけ出してそれをパクられるリスクもあるので、本来はそのリスク分も考慮した料金でないといけません。
安く提供したいなら、安く提供できるような仕組みができていないといけません。
また、必ずしも安く受託することが、顧客のためになるという訳でもないでしょう。

実際に日本の有名なクラウドソーシングサイトはありえない料金の依頼ばかりになっていて、それでも受託するようなレベルの人しか集まってないのではないかと思います。
そうなると、依頼側は安かろう悪かろうしか得られず、受託側は相場よりはるかに安い料金しか提示されない、悪循環から抜け出せないのがクラウドソーシングの実態だと感じます。

クラウドソーシングのビジネスモデル自体は良いと思うのですが、利用する側(依頼側、受託側)も運営側も現状を変えようとしないなら、このまま消えてしまうでしょう。
さすがに現状に対して運営側も満足していないでしょう。

しくみは良いけど、利用者や運営側のせいで利用者の受ける価値が低い例は他にもありそうです。
しかし、あんな料金でよく受けるなと、正気を疑うぐらい安いです。

寿司

皆さん、寿司を握ることはできますか?
握ったご飯の上に切った生魚が乗っているだけですが、「あの程度の物は誰でもできる」なんて誰も思っていないでしょう。
見た目は簡素ですが、実際に握って、提供して、顧客に喜んでいただくには、職人さんの技術、知識、経験、ノウハウ等が必要だと分かっているからです。
その上で、ご商売をされています。

寿司

これは何も寿司を握るというだけの話ではなく、どんな業種業態においても言えることでしょう。
料理を作れる人はたくさんいるでしょうが、そういった方が料理を提供する店を出したら皆お客様に喜んでいただける…なんて誰も思わないはずです。

しかし、Webやパンフレットや名刺などのページ数の少ない平面媒体は「作るだけ」なら誰でもできるので、事業として参入する企業は後を絶ちません。
私の経験から2つのケースをご紹介します。

[case:1] 業界の知識〇/制作の知識×

とある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社は、元々不動産業者向けのソフトウェアを販売していました。
Webサイトも作ってほしいという声があったので、デザイナーを雇用してWeb制作も請け負うようになったのですが、社長自体がWeb制作に関する知識がなく、相手が気に入る見た目のものを作ればそれでOKだと思っていました。

私が入社した時には、元々一人いた女の子のデザイナー(Kちゃん)が育児休暇中で、制作担当は私一人でした。
一番最初に携わった仕事でのことですが、デザインを作成して社長に見せたところ、(クライアントに確認しないで)コーディングをしろというのです。
同業者の方でないと分かりにくいと思いますので飲食店で例えると、お客様が入店したら、メニューを聞かずに勝手に料理を出せというのと同じ状態です。

これがこの会社のやり方なのかと思ったのですが、Kちゃんに仕事上のことで確認することがあった際についでに聞いてみました。
Kちゃん曰く、今までも取りあえずデザインして、コーディングして、相手に見せてフィードバックに対して修正して…というのを繰り替えしていたそうです。
例えるなら、メニューを聞かずに勝手に料理を出して、気に入らなかったら別のものを作り直して出すといった感じです。

Kちゃんはデザインの学校を卒業し、BtoCの通販事業を行っている会社で楽天のサイトの管理を行っていました。
デザインの知識もコーディングの技術もあるのですが、顧客から依頼を受けてのWebサイト制作をしたことがなかったので制作会社の制作フローは知らず、おかしいなとは思いつつも具体的に指摘ができなかったそうです。

そんな無茶苦茶なやり方をやっている会社があったのかと驚きましたが、このままではいけないと思い、社長に直談判して最終的には私がクライアントのところに行って折衝から全てを行う風に取り付けました。
社長はなぜだかピンと来ない顔をしていましたが。

[case:2] 業界の知識×/制作の知識×

同じくある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社で医療支援のシステムを制作、販売しようとしていました。
医療業界に関する定期的な情報収集もしておらず(業界紙や雑誌すらありませんでした)、医大の教授と共同で開発…などもやっている訳もなく、情報と言えば社長の奥さんがとある病院の現場で働いているというだけで、そのシステム自身、業界で一番有名なシステムより機能を増やして価格を下げたら売れるであろうという根拠のもとに作っていました。
システム自体の制作プロセスが滅茶苦茶なのですが、システムに関しては私は関わっておりませんでしたので、この記事では割愛します。
システムではなく、パンフレットを作る際のことです([case:1]とは異なり、サービスの提供ではなく、自社用の販促物の制作の話になります)。

ちなみにDTPの知識のあるデザイナーは会社にはいませんでしたし、最初にパンフレット作りで集まっていたグループの誰も、どうやって作ったら良いのかというフローに関する知識もろくにない状態です。
私はそれに途中から参加することになった訳ですが、結論から言うと作り方が滅茶苦茶でした。

実際に使用される方向けなのか、代金を払う経営者向けなのか、その辺りも明確ではない。
何となく考えて、それぞれがどういう基準で良し悪しを判断したのかは分かりませんが、多数決で決めたキャッチコピー。
それ以外の文言は確定していません。

それらを使って他のスタッフが良いと思う(=気に入る見た目)で作ってみて、といった感じでした。
Francfrancみたいな感じが好きやから、そんな感じで作ってみてほしい」…Francfrancと医療と関係あるんかいなって話です。
もちろん、そんな状態で作ったところで当を得たものを作れるわけもありません。
言葉を選びながらつっこんでみたところ、「みんなお客さんの気持ちになって考えています」と言われてしまいました。

作り方を知らなければ作れません

両者に共通して言えることは、自分達が業務を行うだけの知識すら備わっていない、無知だという意識がないということです。

[case:1]の場合は、社長は不動産業界出身なので、業界の知識はありましたが、Webサイト制作に関する知識はゼロでした。
[case:2]の場合は、医療業界の知識も情報もありませんでした。パンフレットを制作する手順も知りませんでした。

表にするなら以下の通りですね。

対象の業界に対する知識 制作に関する知識
case:1 ×
case:2 × ×

ノウハウというものは、業務を重ねながら徐々に得ていくものですので、最初はノウハウがないのは当然です。
同じように経験がないのもしょうがありません。誰だって最初は未経験です。
しかし、知識がないのに調べもしないし、人に聞きもしないどころか、自分達は間違っていない…これでは成功しませんね。

「自分達に不可能なことを業務として、ビジネスになりますか?利益が出ますか?」
こう聞くと「無理に決まっている」誰もが答えるでしょう。
しかし、ビジネスでは得てして握れないのに寿司屋を開業しよう、寿司を売って利益を上げようということが起こりえます。

これからやっていくにしても、スキルやノウハウが身につくまで長い目で見ることができるか、耐えられる企業体力があるか。
適切な人材がいるか、あるいは適切な人材を得られるのか。
他にちゃんと収益を上げる事業の柱があってのことか。
こういったことがクリアできないと、事業としてスタートラインに立つことも難しいでしょう。

私の在籍しているIT業界ではこういった企業をちょこちょこ見かけます。
そもそも顧客や自社のベネフィットを満たすものが作れないから、会社がもりもり潰れるのかもしれません。

ちなみに、私は寿司のネタならハマチとかヒラメなどの白身魚が好きです。

ご依頼やご相談、お問い合わせなどはこちらより受け付けております。
初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください