面接

企業や事業者が人材を新規採用するにあたって、面接を行います。
それで求職者の良し悪しを判断する材料にするわけですが、同様に求職者も企業を見ています。

デザイナーという職業は腕で食べているということと、経営が脆弱な企業が多いということから、他業種よりも転職回数が多いと思われます。
私も例にもれず何回か転職をしているのですが、1回の転職時に数十社面接を受けて、何社か内定を頂いた中で選択するという方法でやってきました。
正確な数は分からないものの、面接を受けた回数は100数十社は下らないでしょう。
そうなると、面接の際に「ああ、この会社はあかんな…」と分かるようになってきます。

いくつか例をご紹介します。

[case:1]

大手が先行しているサービスを後追いで始めたいといったものがありました。
具体的にいうと不動産検索のHOME’Sみたいなことがやりたいとのことでした。
さすがに全く同じではなく、若干異なる点もあると言っていた記憶はありますが、どう違うのかははっきり覚えていません。
経営者の方の目標や想いだけが先行していて、その差別点に対して、不動産業者側と不動産や部屋を探すエンドユーザーにとって、HOME’Sではなく、それを利用するメリットがどれだけあるのだろうか、みたいに感じたことは記憶しています。
また、イニシャルコストがどれだけかかるのかという点も全く分からないようでしたし、デザイナーがいたら同じようなシステムが作れると安易に考えているようでした。

ちなみに、そのサービスを実際に行ったかどうかは知りません。

[case:2]

確か地下鉄谷町線沿線にあった会社だと記憶していますが、「地下鉄は終電が早い…云々」と地下鉄で通勤するのが都合が悪いかのように言われたことがあります。
なんでも「お客様を感動させる」ために、あるスタッフは毎日終電で帰り、早朝に出勤するのだそうで、要するに「お客様を感動させる」ために長い拘束時間を要求される訳です。
従業員にそれだけの負担を強くというのは、従業員が無理をしないとやっていけないということで、すぐに破綻するなと感じました。
ですから、「お客様を感動させる」と熱っぽく何度もおっしゃってましたが、何をもって「お客様を感動させる」なのか聞く気にもなりませんでした。

社名すら覚えていないので、その後どうなったかは分かりませんが、普通に考えて数年待たずに倒産していると思います。

[case:3]

何も聞いてこない会社がありました。
こちらも質問したいことは色々とある訳ですが、企業も応募者に対してどういった経験・スキル、人間性なのか等を知るために面接をするんだと思います。しかし、その会社の面接官は何も聞いてきません。
質問の内容や受け答えに対する反応を見るというのはあるでしょうが、向こうからの質問は「他に質問はないですか?」しかありませんでした。

面接官が複数いて、メインでしゃべっている方以外は何も聞いてこないばかりか、メインで面接している方から何か質問はないかと話を振られたときに「別にありません」と答えるというのはよくあります。
雰囲気的に聞くことがないというよりも、何を聞けばいいのか考えていないとか、分かってないように感じました。

面接される側から見て印象は悪いと感じる人はいても、良いと感じる人はいないでしょうね。

他にも色々な例はあるのですが、キリがないのでこれぐらいにしておきます。

さて、中小企業が良い人材を確保できない…なんて話をよく聞きますが、理由の一つに面接がまずいというのもあるのではないかと感じています。
大企業と比べて…とか、会社の魅力を訴求できない…などの前に、そもそもこの社長と一緒に、あるいはこの人と一緒に仕事したくないなと思われるような面接をやっていないか、利害関係のない方に客観的に見ていただくというのはいかがでしょうか。

スーツと常識

シングルループ学習とダブルループ学習について、中小企業診断士の試験を受けられた方は勉強されたはずです。
普段の生活においても、意識するしないは別として、その2つを使い分けていると思われます。

スーツと常識

ある企業の経営者の方とお話していた時のことです。
その企業は通常来客がありませんし、業務内容を考えるとスーツである必然性はありません。
ですが、その経営者の方は仕事をするときはスーツでなくてはいけないという考えでした。
それ自体は別に悪いわけではないのですが、業務内容や効率性を鑑みて選択した結果ではなく、「仕事はスーツが常識だから」そうおっしゃっていました。

常識だから。
慣例だから。
何となく。
考えずに決めたことは、通常省みられることがありません。

さて、現在の経営状態というのは、過去の選択の結果です。

こういう事業を始めよう。
ここに事業所を構えよう。
誰を採用しよう?
どう仕事を割り振ろう?
今行うべきタスクは?

大きなことから小さいことまで、過去に選択してきたことの積み重ね、そしてそれらの結果が現在の状態です。

いままで多くの選択してきた中で、どれだけ考えた末の選択だったでしょうか?
今まで当たり前だと思ってやっていることも、その選択に必然性はあるのか?論理的に正しいか?行わなかったらどうなる?他に選択肢はないのか?
全ての事象においてゼロベースで考えるのは難しいと思いますが、そうやって考えたものなら分析が可能ですので、つまづいた時だけでなく、成功した時も立ち返って原因や理由を特定し次以降に繋げる、といったことが可能になります。

ちなみに、社長の他に1人だけスタッフの女の子がいたのですが、「お客さんが来ようが来まいが、仕事ならスーツが当たり前」と社長がおっしゃるのを聞きながら、「この子は私服やけどなあ」と思っていました。
服装はどうでも良いのですが、自分の考えが徹底できていないという点は問題ですね。

クラウドソーシング

クラウドソーシング

クラウドソーシングというものをご存知でしょうか。
Web上でのビジネスマッチングですが、依頼主と受託側が会わなくても仕事ができて、物理的な制約がないという点は素晴らしい点だと思います。
ですが、私がフリーランスのデザイナーだとしても使用しないでしょう。
理由は、リスクに対して単価が話にならないぐらい安すぎるから。リスクがゼロでも安すぎるから。あと、やっぱり安すぎるからです。

依頼側が相場を分かっていないだけかも知れませんが、Webの制作に関して言えば相場の半値以下です。
それでも実績が欲しいから採算度外視で案件を受託したり、暇な人が小遣い稼ぎ程度の意識で受託する訳です。
その結果、ありえない料金の依頼ばかりになってしまっています。

運営側も料金の目安を提示したり、料金が妥当かどうかを利用者が意見できるようにするなど、非常識な案件を排除する努力をすべきでしょうが、現状を見る限りそういった努力をしているようには見えません。
案件の料金が低いために運営者が受け取るマージンも上がらない訳ですが、クラウドソーシングがいくつも存在するってことは、運営側は現状で儲かっているっていうことでしょうか?
だとしたら、改善されることは期待できないということですね。

料金を決めることはセンシティブで慎重に行うべきことです。
クラウドソーシングだからという訳ではありませんが、アイデアだけ出してそれをパクられるリスクもあるので、本来はそのリスク分も考慮した料金でないといけません。
安く提供したいなら、安く提供できるような仕組みができていないといけません。
また、必ずしも安く受託することが、顧客のためになるという訳でもないでしょう。

実際に日本の有名なクラウドソーシングサイトはありえない料金の依頼ばかりになっていて、それでも受託するようなレベルの人しか集まってないのではないかと思います。
そうなると、依頼側は安かろう悪かろうしか得られず、受託側は相場よりはるかに安い料金しか提示されない、悪循環から抜け出せないのがクラウドソーシングの実態だと感じます。

クラウドソーシングのビジネスモデル自体は良いと思うのですが、利用する側(依頼側、受託側)も運営側も現状を変えようとしないなら、このまま消えてしまうでしょう。
さすがに現状に対して運営側も満足していないでしょう。

しくみは良いけど、利用者や運営側のせいで利用者の受ける価値が低い例は他にもありそうです。
しかし、あんな料金でよく受けるなと、正気を疑うぐらい安いです。

寿司

皆さん、寿司を握ることはできますか?
握ったご飯の上に切った生魚が乗っているだけですが、「あの程度の物は誰でもできる」なんて誰も思っていないでしょう。
見た目は簡素ですが、実際に握って、提供して、顧客に喜んでいただくには、職人さんの技術、知識、経験、ノウハウ等が必要だと分かっているからです。
その上で、ご商売をされています。

寿司

これは何も寿司を握るというだけの話ではなく、どんな業種業態においても言えることでしょう。
料理を作れる人はたくさんいるでしょうが、そういった方が料理を提供する店を出したら皆お客様に喜んでいただける…なんて誰も思わないはずです。

しかし、Webやパンフレットや名刺などのページ数の少ない平面媒体は「作るだけ」なら誰でもできるので、事業として参入する企業は後を絶ちません。
私の経験から2つのケースをご紹介します。

[case:1] 業界の知識〇/制作の知識×

とある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社は、元々不動産業者向けのソフトウェアを販売していました。
Webサイトも作ってほしいという声があったので、デザイナーを雇用してWeb制作も請け負うようになったのですが、社長自体がWeb制作に関する知識がなく、相手が気に入る見た目のものを作ればそれでOKだと思っていました。

私が入社した時には、元々一人いた女の子のデザイナー(Kちゃん)が育児休暇中で、制作担当は私一人でした。
一番最初に携わった仕事でのことですが、デザインを作成して社長に見せたところ、(クライアントに確認しないで)コーディングをしろというのです。
同業者の方でないと分かりにくいと思いますので飲食店で例えると、お客様が入店したら、メニューを聞かずに勝手に料理を出せというのと同じ状態です。

これがこの会社のやり方なのかと思ったのですが、Kちゃんに仕事上のことで確認することがあった際についでに聞いてみました。
Kちゃん曰く、今までも取りあえずデザインして、コーディングして、相手に見せてフィードバックに対して修正して…というのを繰り替えしていたそうです。
例えるなら、メニューを聞かずに勝手に料理を出して、気に入らなかったら別のものを作り直して出すといった感じです。

Kちゃんはデザインの学校を卒業し、BtoCの通販事業を行っている会社で楽天のサイトの管理を行っていました。
デザインの知識もコーディングの技術もあるのですが、顧客から依頼を受けてのWebサイト制作をしたことがなかったので制作会社の制作フローは知らず、おかしいなとは思いつつも具体的に指摘ができなかったそうです。

そんな無茶苦茶なやり方をやっている会社があったのかと驚きましたが、このままではいけないと思い、社長に直談判して最終的には私がクライアントのところに行って折衝から全てを行う風に取り付けました。
社長はなぜだかピンと来ない顔をしていましたが。

[case:2] 業界の知識×/制作の知識×

同じくある会社にWebデザイナーとして勤めていた時の話です。
その会社で医療支援のシステムを制作、販売しようとしていました。
医療業界に関する定期的な情報収集もしておらず(業界紙や雑誌すらありませんでした)、医大の教授と共同で開発…などもやっている訳もなく、情報と言えば社長の奥さんがとある病院の現場で働いているというだけで、そのシステム自身、業界で一番有名なシステムより機能を増やして価格を下げたら売れるであろうという根拠のもとに作っていました。
システム自体の制作プロセスが滅茶苦茶なのですが、システムに関しては私は関わっておりませんでしたので、この記事では割愛します。
システムではなく、パンフレットを作る際のことです([case:1]とは異なり、サービスの提供ではなく、自社用の販促物の制作の話になります)。

ちなみにDTPの知識のあるデザイナーは会社にはいませんでしたし、最初にパンフレット作りで集まっていたグループの誰も、どうやって作ったら良いのかというフローに関する知識もろくにない状態です。
私はそれに途中から参加することになった訳ですが、結論から言うと作り方が滅茶苦茶でした。

実際に使用される方向けなのか、代金を払う経営者向けなのか、その辺りも明確ではない。
何となく考えて、それぞれがどういう基準で良し悪しを判断したのかは分かりませんが、多数決で決めたキャッチコピー。
それ以外の文言は確定していません。

それらを使って他のスタッフが良いと思う(=気に入る見た目)で作ってみて、といった感じでした。
Francfrancみたいな感じが好きやから、そんな感じで作ってみてほしい」…Francfrancと医療と関係あるんかいなって話です。
もちろん、そんな状態で作ったところで当を得たものを作れるわけもありません。
言葉を選びながらつっこんでみたところ、「みんなお客さんの気持ちになって考えています」と言われてしまいました。

作り方を知らなければ作れません

両者に共通して言えることは、自分達が業務を行うだけの知識すら備わっていない、無知だという意識がないということです。

[case:1]の場合は、社長は不動産業界出身なので、業界の知識はありましたが、Webサイト制作に関する知識はゼロでした。
[case:2]の場合は、医療業界の知識も情報もありませんでした。パンフレットを制作する手順も知りませんでした。

表にするなら以下の通りですね。

対象の業界に対する知識 制作に関する知識
case:1 ×
case:2 × ×

ノウハウというものは、業務を重ねながら徐々に得ていくものですので、最初はノウハウがないのは当然です。
同じように経験がないのもしょうがありません。誰だって最初は未経験です。
しかし、知識がないのに調べもしないし、人に聞きもしないどころか、自分達は間違っていない…これでは成功しませんね。

「自分達に不可能なことを業務として、ビジネスになりますか?利益が出ますか?」
こう聞くと「無理に決まっている」誰もが答えるでしょう。
しかし、ビジネスでは得てして握れないのに寿司屋を開業しよう、寿司を売って利益を上げようということが起こりえます。

これからやっていくにしても、スキルやノウハウが身につくまで長い目で見ることができるか、耐えられる企業体力があるか。
適切な人材がいるか、あるいは適切な人材を得られるのか。
他にちゃんと収益を上げる事業の柱があってのことか。
こういったことがクリアできないと、事業としてスタートラインに立つことも難しいでしょう。

私の在籍しているIT業界ではこういった企業をちょこちょこ見かけます。
そもそも顧客や自社のベネフィットを満たすものが作れないから、会社がもりもり潰れるのかもしれません。

ちなみに、私は寿司のネタならハマチとかヒラメなどの白身魚が好きです。

IT関連の企業がすぐに倒産する理由

帝国データバンクの調査によりますと、2012年(このブログを書いている時点での最新情報)のIT関連企業(システム・ソフトウエア開発業者)の倒産件数は過去最悪だそうです。
同業、あるいは隣接している業界の方なら、IT関連企業の倒産を耳にする、あるいは実際に勤めていた会社が倒産なんて経験は珍しくないことだと思います。

ものを作る人が陥りがちな、ニーズを考えずにシーズ思考でのみ考えた商品・サービスの提供、資本が少なくて済むので元々企業体力が弱い企業が多い、そもそも技術のコモディティ化が激しくて差別化ができていないなど、もちろん他にも理由はありますが、結局それはトップマネジメントが、トップマネジメントに必要なスキルに欠けているからだと考えています。

ハーバード大学教授だったロバート・カッツという人が、トップ・ミドル・ロウワーマネジメントそれぞれに必要なスキルを図にしたカッツモデルをご覧ください(下図)。

カッツモデル

3つのスキルはそれぞれ以下のようになっています。

  1. テクニカルスキル:業務を遂行する上で必要な知識やスキル。業務遂行能力。
  2. ヒューマンスキル:仕事上の人間関係を築くスキル。対人関係能力。
  3. コンセプチュアルスキル:論理的思考力、創造的問題解決力および統合的計画力等。概念化能力。

論理的思考力や問題解決力は誰もが必要なスキルですが、トップマネジメントはそれらを経営レベル、経営戦略レベルで行うことが求められているということで間違いないでしょう。

  • クライアントの業務におけるボトルネックは何なのか、業務全体を見て判断できるか?
  • クライアントも気付いていない問題点を発見することができるか?
  • クライアントの課題を達成することができるか?
  • 市場のニーズを汲み取ることができるか?
  • それを踏まえて新しいサービスを立案することができるか?
  • 技術のコモディティ化が激しい中で、どうやったら差別化できるか?

そういった市場の状況判断、そこから企業戦略の策定、それを行うための組織づくり、実行統制、サービス作成のための市場のセグメントやターゲティング、マーケティングマネジメント…etc。
そういった視点は現場レベルのマネジメントをやっているロウワーマネジメントにはあまり求められないかもしれませんが、IT業界だと、スキルがあればやっていける、現在いくつかクライアントになってくれるところがあるから独立する、なんていう人を見かけます。

さて、独立したての料理人がいたとします。
店を出した場所が悪い、料理の種類と値段が出店場所に合っていない、そんな店でも料理が美味しければ繁盛する、現場で人を使うのが上手ければやっていける、そんな風に考えている人はいないでしょう。

スキルがあればやっていける、独立するなんていうのは、結局のところ、トップマネジメントに必要なスキル、能力、および視点などを含めたコンセプチュアルスキルの欠如ではないでしょうか(実際の作業を自分ができなくても、料金を払って人にできる人に依頼すれば済む話です)。
それが、IT関連の企業がすぐに倒産する理由だと考えています。

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初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください